2014年12月29日月曜日

コミケ2日前。果たして人は来てくれるのか…

 星飛雄馬が、クリスマス会を開いて友達と姉ちゃんを呼んだら、誰一人来ない有名な話があるでしょう。
 会場になる部屋を壁のペンキ塗りから始めて、音楽かけてノリノリになって準備をして、折り紙で輪飾り作って、一人一人のプレゼントを用意して待っているの。自分は三角の帽子をかぶって、友達を今か今かと待ち続けていたら、みんな来ない。


悔しさにうち震えていたら、目の前になぜか外国人選手(オズマ)の幻が見えてこう言う。「みんなお前のことを野球ロボットだと思っている!クリスマスは人間の祭りだ。ロボットは祭りをやらん!なんなら同じく野球ロボットであるこの俺とやるか、クリスマスを!」とか。これ、実際にそう言われたわけじゃなくて、星飛雄馬はそう言われたことを勝手に想定してキレて泣きながら、「俺はロボットじゃない、人間だァァ!」って、自分でクリスマスのごちそうをひっくり返し、ツリーを窓ガラスに放り投げて荒れ狂うの。

 CDを一所懸命作って、明後日コミックマーケットに出す。でも、人が全然来てくれなくて、すごすごと大量のCDを持って帰ることを考えると、もはや自分で書いた前のブログを見返しても「なにが甘栗だ!」と思えてくる。
 いくら楽器が上手でも、人に聴いてもらう努力を全くしていなくて全然お客に来てもらえないバンドを山ほど見てきた。たとえばそういうバンドの人が、他に大した実力がなくても宣伝を頑張って人を呼んでいるバンドをやっかむようなことを言っていたら、おかしいと思うでしょう。じゃあ君はたくさんの人に聴いてもらいたいのに、黙っていても自分の楽器に人を引き寄せる力があると過信して、その努力をしなかったんだね?って、ことになる。だから、僕は宣伝もできないバンドは聴いてもらえなくて当たり前だと思っている。
 
 それもあって、録音が終わり、PVの制作が終わってからというもの、ずーっとバンドを「どうやったら聴いてもらえるか」ばかり考えてきた。これが非常に健康によろしくない。ホームページで、twitterで、youtubeで、ニコニコ動画で、またイベントに行ってフライヤーを配って、とやってきたけれど、これは楽器を練習したり新しい曲を編曲したり録音したりということより何倍も悩ましく、成果も上げにくい作業である。
 ともすれば、僕らのやっていることは仮面ライダードライブ放映の裏番組で、仮面ライダーアマゾンが再放送されているようなものだと思えてくる。現代のイケメンライダーに対抗して、こっちは常に上半身裸だ!とかやっても、すごくアクションに磨きをかけて、迫真の演技で「アァァァマァァァゾーーーン!!」とかやっているのに誰も観てくれない…てなもんだと思えてくる。
 沈んだ気持ちにばかりなっていてはいけない、そう思っても、連れ合いと娘が買い物に行くと言って外に出たら、勝手に手がyoutubeの検索画面に「星飛雄馬 クリスマス」と入れている。
 
 コミックマーケットは12月30日に行われるが、僕らの年代でこの年の瀬に、東京ビッグサイトに行って何万人の人ごみに紛れてこようという人は少ないだろう。
 しかし、soundcloudなどネット上での発表ではなくCDという形にこだわる以上、どこかで発表の機会を持たなくてはならない。また、来てくれた人にCDを手渡しできる点で、やはりコミックマーケットなどのイベントはそこまで積み重ねてきた努力が報われる場だと思う。だから、いくら不安でも、実際売れなくても、あと二日間頑張ろうという気でいる。

 無理かもしれないが、僕らは春麗みたいなバンドを目指したい。
 とうとう死神博士おかしくなったかと思わないでほしい。僕らの世代はスト2の爆発的ヒットの時期に思春期を過ごしている。ゲーセンといえばビームと戦闘機と筋肉みたいなイメージだったのに、そこに春麗が出てきたんだから、その存在感たるやサークルの姫どころではない。その後にもっとかわいいキャラクターや、有名な声優を起用していたり、もっとお色気路線だったりするキャラクターが出てきたとしても、それ以上になるわけがない。
 おかしな話がある。以前、大学生になってからできたゲーセン友達に「中学生のころ、ゲーセンですげえキレイな女の子がいてさ、まるで春麗かと思ったよ」というバカな話を僕がしたら、その友達は「俺も昔1回すげえカワイイ子を見たことあってさ、マジで春麗みたいだと思った」と言っていた。僕らの意識の中に、ゲームキャラクターというより、女の子に対する憧れの集約されたものがはっきりと刻み込まれているのだ。20年以上経った今も、春麗は新しいゲームに出て顔も服も変わらない。それを見て僕らの世代は心が温かくなるはずだ。
 
 大人気で有名なバンドになりたいのではない。演奏や編曲が上手いバンドと認識されたいわけでもない。
 こんなに長く休んで再始動して改めて、10年経っても忘れないでいてくれた人の大きさを感じている。
 思い返してみれば、僕らは下手で録音も音作りもまだまだだったかもしれないけれど、本当に一所懸命やっていて、ライブに来てくれた人はきっとその日楽しんで帰ってくれたはずだと思う。そういえば思い返してみたら、あの日好きな曲を演ってたなとか、2時間ワンマンでやってたなとか、思い出してくれる人はきっといる。
 そういう人たちのために活動をしていきたいし、今回の再始動が、また10年経ってからも覚えていてくれる人がいるくらいのものでないといけない。それくらい頑張りたい。だから目標は遠大だが、春麗くらい長く、誰かの心に残るバンドでいたいと勝手に思っている。

 今回のアルバム「Push Start My Heart」は、10年楽しんでもらえるCDになったと思う。もう、コミックマーケット当日売れなくても、そのほかのイベントに出し、ライブ会場に持って行って手に取ってもらおう。遠方で来られない人や都合のつかない人の手にも渡る方法を考えたほうがいいのは分かっているし。
 いや売れなくても、とか言っちゃいけないな、いくら仮面ライダーアマゾンでも、アマゾンアマゾン言って騒いでたら、もしかしたら間違って「こっちの方がいい」っていう子どももいるかもしれない。
 だから僕も勝手に頭の中で外国人選手を作り出して、「コミケは今の人のイベントだ。みんなお前のことを過去のバンドだと思っている。何なら俺とやるか、艦これメタルバンドを!」とか思わないことにするよ。


2014年12月26日金曜日

CDのプレスを発注して届くまで

以前活動していた時には、音源を作ったらCD-Rに焼き、ジャケットはプリンターで刷ってカッターで切り…とやっていた。ライブ前とかでも通販の申し込みがあったら手作業でCD-Rを作っていて、これで指を切ったらアウトだなぁ、とか思っていたものだった。
 その頃から、いつかCDはプレスで、つまり工場にきちんと作ってもらって、盤面が青くない本物を作ってみたいという気持ちがあった。

 以前プレスができなかった理由はまず、お金がなかったから。
 今はプレス料もだいぶ安くなった。そして経済的にも僕は野原ひろし(クレヨンしんちゃんの父)レベル近辺の生活はたぶんできているので、たとえばプレスをやってみてCDが一枚も売れなかったとしてもまあ、大人の趣味としてはこのくらいは許容されるだろう。彼と違ってゴルフとかパチンコとかしていないし。
 もうひとつの理由が、納期である。プレスに出すならどの業者を見てもだいたい発注から納品まで2週間くらいと書かれている。コミックマーケットに出す二週間前にCDの作業が終わるなんて、以前からしたら精神と時の部屋でもないとまず無理であった。(これは、夏にCDを出したときからすぐ作業をスタートさせて、サボることなく続けて冬を目指しても、ということである)
 それを今回はマスタリングまで11月中に終えたのだから、まあ音源制作について色々な変化はあったにせよ、かなり頑張れたと思う。

 しかし、プレスに出すというのは録音してミックス・マスタリングするだけの作業ではないのだ。もしも、いつか自主制作でCDを作るという人がいたらぜひ覚えておいて欲しいのだけど、まずジャケットなど印刷物の準備が要る。

 今回はジャケットをお願いして、CGではなく紙に絵の具で描いてもらった。描く人がデジタルが得意かアナログが得意か、ということも勿論ある。けれど、僕は紙に描かれたものには指を絵の具で汚して描いた「重み」があると思う。CDのジャケットはもちろん印刷だけれど、製品を手に取った時に作品としての存在感があるのはCGではなく絵だと勝手に信じているのだ。
 今回は原稿のサイズがA3を超えているので、家庭用のスキャナでは無理で、街の印刷所に行ってスキャンしてもらった。これが、ちゃんと頼んでいるのに持って帰ってきたら解像度が足りなかったり、JPGになっていたりして他の業者に頼んだり、さんざんすったもんだしたのだ。数値や形式の問題だけではなく、原稿をgrassiaさんから受け取った時の感動がジャケットに再現されていないと、嬉しいのは僕とメンバーだけになってしまうから。
 スキャンが無事終わったら、今度は画像を紙ジャケットの形にするためにPhotoshopとIllustratorで加工する。この辺は分かっている人なら当たり前の作業だけど、慣れない人には大変だと思う。

 一方、CDのマスターはFedexという国際宅急便でプレス工場のある台湾に送った。プレスは国内と海外(だいたい台湾)があるが、僕はその辺はこだわりが無いので安く納期も短い台湾に頼むことにした。
 通関のしきたりで、ジャケット裏面とCDの盤面にPrinted in Taiwanと入れなきゃいけない、と言われた。これもまったくこだわりがないし、なんか書きたくない人もいるらしいが、台湾で作ってもらったことを隠すこと自体おかしいのでしっかり入れた。業者によると、すげー小さい文字でわからないように入れるバンドとかもあるらしい。なんだそれ、Made in USAとかなら大きく書くのか。いい加減にしろ。お世話になってるくせに。コカコーラでも飲んでたらよろしい。

 今回はe-trekというメーカーにお願いしたが、日本語が上手な人がいてメールでの質問やリクエストにはかなり親切に応えてもらうことができた。ジャケットがちょっと特殊だったのでここにお願いしたのだが、対応や完成した製品を見ていても選択に間違いはなかったと思っている。
 じゃあ何が困ったかというと、このFedexという宅配業者である。まあ海外に物を送るのってそういうものなのかもしれないけど、「もう頼まねえよ!」と言いたくなるくらいの酷さで閉口した。

 Fedexのサイトには、「台湾に翌日届く」と書かれている。まあ早くマスターアップしたので余裕はあったけれど、それがまったく翌日になんか届きゃしないのだ。
 まず、業者にCDを渡したのが12月5日の金曜日。その後、荷物の追跡をしていたらもう寿命が縮まるかと思ったよ。

 12/6土曜日、成田のFedex営業所。(あれ?翌日なのにまだ成田?)
 12/7日曜日、成田のFedex営業所。(ああ、土日はお仕事休みなのね。ヤマト運輸とかの常識でいるのは違うのか)
 12/8月曜日、成田のFedex営業所。(は!?)
 12/9火曜日、成田のFedex営業所。(おいおい、なにこの熟成期間?牛肉の赤身か?翌日配達って言ってなかった?)

 結局、火曜日のうちには荷物が動くことがなかった。しかもこの時点で配達予定が「未定」に。1日を争って録音とかしていた自分やメンバー、眠い目をこすってマスタリングしたボブの努力はいったい…。
 この時点でe-trekからは、納期は「12営業日」だという知らせがあった。これは実はどこでもそうらしい。営業日に土日は含まないので、e-trek以外だとだいたい14営業日と書かれている。これは土日も含めると3週間にまたがるということになる。
 メールで質問をしたら、12/9の火曜日までに届けば大変だけど12月25日までに日本に届ける、とのこと。

 12/10水曜日深夜2時、Fedex経由地に到着。(GUANGZHOU CN)
 中国の広州?まあ、台湾に行くには中国を経由しなきゃいけないんだろうな、などと思っていたら…
 12/10水曜日の朝6時、輸送中。(ANGELES CITY PH)
 あ、あの…PHってどこの国?
 ふぃ、ふぃりぴん?なぜ?

 その後はすんなりと台湾に入り、その日の夕方には工場に着いたのだった。しかし翌日届くはずが、金曜日〜水曜日の6日間もかかってしまった。そして、水曜から12営業日だと最短で12/26(金)に完成。そしてもしまた輸送に6日かかったら……
 終わった、完全に。コミックマーケットは12/30(火)なので、前日の29日中に自宅に届いてなかったらつまりそれは落としたということだ。しかも27,28日は土日。詰んだ。

 すぐCDRを焼く準備をした。泣きながら。
 なんで一ヶ月前に録音を終わらせて、完成しないなんてことがあるんだ…。そういうもんなのか。やっぱり僕らはカッターナイフを手に内職するのが身分相応なのか。
 CDRとジャケットを作ってくれる国内の業者もあるようだが、だいたい50枚で2万円くらい。原価で売るとすると1枚400円でCD-Rを手に取ってもらい、僕らの手元にはコミックマーケットが終わった瞬間、プレスCDが山のように届くのだ。もういやだ。

 何度か台湾へのメールと電話のあと、祈るような気持ちで待っていたら……
 届いたー。
 

 なんと12/24。サンタさんありがとう!じゃなくて、e-trekがすごく急いで作って、土日にかからないよう平日の真ん中に送ってくれたのであった。e-trekの林さんありがとう!

 かと言ってすぐ開けることはできない。なぜならそれは僕が小心者だからだ!これでもしCDがちゃんと再生できないとかジャケットが逆さまとかだったら心臓が止まる。
 それで、連れ合いが戻ってきてから封を切ってもらった。
 
 

 大丈夫だー。よかった!ちゃんと紙ジャケの印刷もきれい。CDも音飛びがない。
 そんなわけで、いま手元に完成したCDがあります。パロム&ポロムのジャケット超きれい。そして、いい音楽だー。(酔っ払っていません)

 だが、プレス代金を安くするためにこれだけの量を作ったけど、これどのくらい売れるんだか心配になってきた。
 まず僕の分でしょ、ボブの分、てまりんの分、grassiaさんの分、ビデオ撮影を快く引き受けてくれた方の分、あとleSYNさんに送る分、これで6枚でしょ。あと、コミケに行くよ!と声をかけてくれた人が5人くらいいるので、あわせると11枚。
 このブログを見ている人は、だいたいファミコン世代だから、なかなか年の瀬にコミケまで来たりできないだろう。そしたら相手は初音ミクとか聴いている人か。あと、10代?無理だー!
 お客は全部で5人くらいか?じゃあ持っていくCDは、多く見積もって15枚くらいになるだろうか。

 こういうとき、バイトで1日で甘栗を100キロ売ったという実績の持ち主である連れ合いに、当日の売り子をお願いしたくなるが、長女&次女の世話をお願いする以上それは無理である。
 じゃあ、僕とボブが売り子をがんばる?猫背で?
 これは本格的にまずい気がしてきた。こうなったら連れ合いに売り子の極意を伝授してもらおう。まず、もごもご喋っているのがよくないんだろうな。当日まで発声練習だ。「あまぐーりーぃ、あまぐぅりー、あまぐり!」

2014年12月22日月曜日

PVを撮ってきたよ!

 KISSのジーン・シモンズが、ジーパンとかTシャツとかでライブをする奴は客をなめている、プロじゃないと言っていた。還暦近くになって怪獣ブーツ履いて、血ノリを流し火を吹いて空を飛ぶ人に言われれば…そ、そうだよねと言いたくなる。観に来てくれる人がいる以上、自分たちがどう見えるかについて配慮しないで、俺たちは音で勝負するとか言っちゃうのはダメな気がする。
 以前に活動していた時はライブをやるとなるとCD制作直後だったり、それでも演奏面で満足してもらいたくて短期間で曲をたくさん足したりして、見てくれに気を使う余裕がなかった。せいぜい目玉おやじのドット絵がついたTシャツとかを着る程度。しかし、余裕がなかったというよりも、見てくれを考えなかったらそれはバンドとして不完全だと今は思っている。

 僕らはライブができるのが存在価値でもあったので、いまメンバーが足りなくてとか、子育てをしていて、という今の状況では、完全な形で活動できていない感覚が大きい。人前で演奏すると、そのために一所懸命練習したり、見え方を曲がりなりにも意識したりとか、プラスがたくさんあるのだ。では、ライブをしないで人前に出るには……ということでPVを撮ってみた。

 CDのマスターアップ後、1週間で絵コンテを作り、ビデオカメラや編集ソフトの調達と撮影をした。しかし、それでも復活後は絶対見た目に気を使うんだ!と決めていたので、衣装作りは前日に徹夜でやった。

 


 ええと…ジーンシモンズ先生すみませんでした。ダイソーで工作用紙を買い、半紙を貼って作りました。ニスを塗ったら輸送した車がすごい匂いに。
 ロケ地は家から30分くらいのところにある広い公園で、こういったものの撮影が許可されている。ただ、撮影を進めていたら公園の管理者がやってきた。
 管理者「あのう、これは何の撮影ですか?」
 僕「自主制作の映画を撮っています」(経験上こう言うとだいたい許可してもらえる)
 管理者「これは何のシーンですか?」
 僕「……戦いです」
 管理者「戦いですか」
 (なんだこのやりとり)
 その後、管理者は紙に僕の名前と、使用機材=ヘルメット(手作り)と書き記して帰って行った。

 ボブ「ねえ、この波動拳ってどうやるの?」
 僕「ほい、波動拳」(ビーチボール)
 ボブ「鉄球は?」
 僕「はい、鉄球」(ゴムボールにすずらんテープをつけたもの)
 
 まあそんな感じで、公園で散歩するおじいちゃんや、ランニングをする近隣の中学生、お弁当を食べている家族連れが遠巻きに見る中、撮影は進んでいった。しかし、このバンドのアキレス腱ともいえる事態が発生。
 僕もボブも徹底的に運動神経が悪い!動きが遅い、足が上がらない、ジャンプが低い!そして猫背!
 そういうわけで、ケルナグールの必殺技も地味なものばかり。スパルタンXもイーアルカンフーも、しゃがみパンチとしゃがみキックばかり。もう、このバンドの存在自体が旋風脚とか昇竜拳とかじゃなくて、しゃがみキック連打とか、そういうもののような気がしてきたよ!
 …いや、そこまで卑下するものじゃないか。鉄柱とか凶器攻撃のような存在でいたい。

 そんな中で気に入っているのはタッグチームプロレスリングの映像。コマ送りを多用したら人形のような変な動きになった。ボブはこういうバンドをやっていながらゲームにあんまり詳しくないので、動きを言って伝えるのに苦労した。「僕が倒れたらフォールしてくれ。いや、すぐ外れそうな感じで。全然抑えこまなくていい」とか。
 ただ、波動拳さえちゃんとできなかったのは笑った。何度か撮っても手がちゃんと開かなくて、下に来た手がお皿のように上を向いてしまう。うちのバンドのギタリスト、波動拳が超下手ーとか言われるのも変だろうと思って言わなかったけれど。

 撮ってきた映像を連れ合いに見せると、「よく捕まらなかったね…」とのこと。女子にこう言われると危ない橋を渡ってひと仕事終えてきた気になり、悪い感じはしない。捕まるの意味がルパンとかゴルゴじゃなくて、ファーザーとか江頭2:50とかの方に属すとしても。
 その後、一週間使って動画を編集した。音が決まっていてイメージも固まっていたので、映像の光と色調にだけ時間を使った。
 
 こうしてできた動画は、ニコニコ動画とyoutubeに投稿した。


ニコニコ動画は
http://www.nicovideo.jp/watch/sm25170402

 まあ、観てくれる人がどれだけいるかは分からないけれど、とにかく作るのがすごく楽しかったので、またやりたいと思っている。せっかくCDを作ったのだから少しでも多くの人に聴いてもらう努力もしなきゃいけないしね。
 よし、次に備えて体力作りと、足が上がるようにストレッチするか。(楽器の練習しろ)

2014年12月7日日曜日

マスターアップ!

 ついに終わりました!一つ残らず。あとは何もやらなくても工場でCDを作ってくれます。おめでとうございました!

 前回のブログで「録音終わった」と書いたけれど、弾き直してしまいました。
 移動中も、子どもの寝かしつけが終わってからも、録音したものを毎日聴いていたところ、
 「むむむ…ここ聴いてみるとアラが目立つなぁ」
→「でも、これがこの時の精一杯だったんだし、自分で聴くからこそ悪いところに耳が行ってしまうんだよな、そうに違いない」
→「やっぱりダメな気がする」
→「明らかにダメなところが分かってて人に聴いてもらうってのはどうなんだ?」
 …と思えてきてしまった。僕の場合は「聴く人の立場からしたらこうだろう」とかいって、人のせいにしつつ自己満足を追求する。それがよくないと分かっていつつも、やはり録り直してしまった。

 200回弾いたと書いたけれど、そこが気になったのでもう200回くらい弾いた。特に最後の日は本当に必死に時間を作って、部屋にこもって弾いていた。長いフレーズを録音するというのは、最後の方に差し掛かると緊張感も上がってくるものだ。弾いている間の心境を実況中継すると、
「ここまできちんと弾けたんだ、最後までしっかり弾くぞ…よし、ここまでできれば、あとは難しいフレーズは無いぞ。冷静に終えられれば…。ぐあ、最後の音を伸ばしてる最中にノイズが!」「ダメだやりなおし」こんな感じ。それを何百回も続けるのだ。(ま、早い話が、下手だからそうなるんだけどね。)
 根を詰めて弾いていて、あと1トラックのみというところで部屋に娘が入ってきた。どーんとドアを開けた娘と、その後に入ってきた連れ合いに僕は反射的に「うそー!」と言ってしまった……。
 そこまで時間を作ってあげて、しかも夕飯ができたから呼びに来たのに「うそー!」とは何だ!と言って、連れ合いにすげー怒られた。確かに、そりゃそうだ。怒られるに決まっている。どう考えても僕が悪い。

 次の日、ボブにファイルを渡しに行って、その話をした。「いや、もうこの録り直しのせいで、家庭崩壊かと思ったよ…」などと言いつつ、そんだけ苦労して録ったんだからもう一度ミックスやり直しになっても勘弁してくれよ、と。
 ボブは言った。「ああー、それ分かるよ」と。いや、やっぱり彼とは大学一年の頃からの付き合いなので、ひどい言葉をつい言ってしまったけれど録音に集中していた僕の気持ちも分かってもらえるかな、と。

 彼は話を続けた。僕もこんなことがあった…と。
 ボブは実兄に自分の購入したばかりのパソコンを占有されていた。その日もオンラインゲームにのめり込んでいた兄は家族用を含めて家の4回線を自分ひとりで使っていた。ボブは自分もネットをつなぐ必要があったのでルーターを再起動した。すると、とつぜん回線が切れたので兄は言った。「かんべんしてよぉー!」と。
 その瞬間、兄の言い方に腹を立てて、ボブは兄に声を荒げて怒ってしまったことがあるんだと。
 長い付き合いの中で、温和な性質のボブが怒っているところを僕は見たことがない。だから、その事件が彼にとって特殊だったことは分かる。 

 しかし、ちょっと待てよ、と思う。その話からすると、ボブは僕にではなく、僕の連れ合いと家族に同情していることになる。つーか、人のパソコンと回線でネットゲームをずっとしてる君の兄と僕は一緒かよ!
 
 いや、もういいんだ。そうなんだよ…。自己満足の録り直しって、周りの人にメーワクをかけるという時点で、ゲームにハマるのと変わりないんだよね。こんなに録り直さなくても弾けるように腕を磨こうと、音楽とは別の方面から諭されたような気がしました……。

 さて、ボブがミックスをしてくれた音を聴きながら、「ここのベースがずれているみたい」とか「ここのエレピをもっと上げてほしい」とか注文をして、曲を仕上げる。終わったら二人でまた聴きなおす。
 全部の曲について音のバランスや、間違った音がないかという確認作業が終わったら、今度は曲間の時間調整をする。余韻を残すような曲のあと、すぐに次の曲が始まってしまうとよくない。だから、たとえばラスボス曲とエンディング曲の間は少し曲間を長めに設定したりするのだ。それが終わると、データをCDに焼くのだ。
 ここで音飛びしていたらいけないので、他に何もせずただCDだけを最初から最後まで聴く。(市販のCDを買って聴いても、ごくたまにノイズが乗ってしまっているものだとか、音飛びしているものがある。HelloweenのTime of the Oathとかね。)
 こうしてできたのが、このマスターCDRだーー!
 

 いやあ、本当にありがとうございました。体から憑き物が抜けていくような感覚だ。
 もうここまでやってもらったら満足だ。僕なんかでは絶対できないような、すごく良い音になったし、もうこれで聴いた人に音圧不足だとか音が悪いとかも絶対言われない。
 そこでなぜか僕は不用意な一言を口にしてしまった。「なんか、ゼロムスの終わったあとに、シュワーって変な音が少しだけ聞こえるよね」と。「でもいいよ、普通に聴いてて気にかかるレベルじゃないし。これでOKにしよう」と。
 
 マスターをもらって僕が家に帰る途中、携帯にボブからメールがあった。「言われてみればあのノイズ気になる」と。
 僕はまた彼の作業時間が増えてしまうと思い、「いいっていいって。それをまたやり直すくらいなら次のアルバム作った方がいいよ」と返信をした。
 しかし、ボブからは「やっぱりやり直す。マスターは宅急便で送る」とメールが。

 ほら見ろ!やっぱり気になったら人間やり直したくなるんだ。じゃあ僕がこんなにやり直して家族とボブにメーワクかけてもそれは大きな罪じゃないだろ。ボブだって人の見えないところが気になって、こうして直すんだから。
 いや、音楽というものはむしろ見えないこだわりで作られているんだ。このバンドを中心になってやっている僕からすれば、こだわるのが僕だけでなく複数になれば、それは良いものが出来上がる材料にもなるのだ。はははは!

 いや、ちょっと待てよ。そもそも僕が重箱の隅をつつくようなことを言っていなければ、ボブだって満足して自分の役割を終えられたはずなのだ。以前ライブをして、来てくれた人に「いやー、素晴らしいライブでした。今日はもう最高でしたよ。好きな曲もやってもらえたし、演奏もすごくよかったです。…死神博士のMCがちょっと長かったけど」って言われてガーンと落ち込んだのと似てるじゃないか。
 結局僕が悪いのか!

 いやですよね神経質な人って。