昔はヤングギターなんかを見ていても、僕が好きなギタリスト達はみんな「メインはこれ一本」と決めていた。たとえば、トニーアイオミであれば、このJay Deeとか。
愛機に対する全幅の信頼ってやっぱり憧れるじゃないですか。自分もこのくらいボロボロになるまで弾きたいと思ってギター買うよね普通。
橘高文彦だってどんなに煌びやかな衣装を着ていたってボロボロのフライングVを弾いている。マイケルシェンカーだってライブ中ブチ切れて破壊しなければ今も「4」って書いてあるフライングVを使っていたかもしれない。
だけどそんな伝説のギタリスト達でさえ、最近は新しいシグネチュアモデルが出たり、最新鋭の楽器に持ち替えたりしている。やっぱり昔のギターは昔の音がするものだ。ロックをやっていて聴いた瞬間に迫力不足だと感じられたら勝負にならない。また、ヴィンテージ系の音を出すバンドでさえも、メンテナンスや録音の利便性から新しい楽器を使うことも多いだろう。
僕に関して言えば、当然のことながらプロではないし、昔好きだったギタリストのように「俺はこれ一本」でいいと思ってやっている。これからもメインのギターを変えるつもりはない。
しかしここで問題が起こった。それは、今さら気づいたのだが僕の顔や風体がどう見ても「フライングVではない」ということだ!
全然「フライング」な要素がなく、どこもかしこも「V」ではない。困った。
誤解のないように言っておくけれど、フライングVというのは形に目が行きがちだけれど、音こそが唯一無二のものだ。同じメーカーの他のギターを使ってもフライングVならではの音は出ない。僕もフライングVの音が好きだから使っているのだ。だけど、世間一般の認知から言ったら、
こうなんだよ!
使っているだけで、「若気の至り」イメージ抜群。実際、駅で外国人に絡まれたり、自分のバンドでない他のイベントなどに持っていくと(コレしか無いからだが)、「昔はすげー音楽やってたんすか?」「髪さかだてて?」「メイクして?」
……うるせーーー!!!
となる。
ギターをやっていると自分のバンド以外で、たとえば余興をやってくれとか、連れ合いと弾き語りで人前に出たりとか、そういうこともある。僕は人前に出るために練習をすればどんな曲であっても絶対自分にとって足しになるし、ステージ慣れにもなるので、そういう機会は大切にしたいと思っている。だけどその度にFlying Vのパブリックイメージに悩まされるのだ。
何年か前のこと。連れ合いの同僚が自分のバンドにギタリストを探していて、頼まれてライブに出たことがある。はっきり言って全然いい曲だと思えなかったけれど、自分がギターソロを弾くんならその部分だけでもめっちゃいい曲にしてやる!と思って、速弾きとメロディを歌わせる部分を組み合わせたソロを作って練習に臨んだ。
その時もまず、ギターを出した瞬間にお決まりの会話が始まったのだった。そして何度も合わせて、バンマスもOKですありがとうございます本番よろしく!みたいな感じだったので、ニコニコして帰った。
しかし、家に帰ったら急にそのバンマスからメールが来たのだ。「あの…やっぱりギターソロがイメージと違うので、考え直してもらえます?」と。
はて、どういうところがどう気に食わなかったんだ?と思ったのだが、「メロディのある曲なんで、あんまり激しい感じのソロはちょっと…」と言うのだ。
まあ、そういうのって音楽やっていたらいくらでもあることだけども、ひとつ疑問があった。そのバンマスが練習のとき自分が大きな声で歌うのに夢中で、弾き語りもコード見ながら必死にやってたので、あんまりソロなんて聴いていなかったように思えたのだ。
その時は録音機材なんて持っていなかったので、ギターソロを打ち込んでメールに添付し、「では、こんな感じでどうでしょう?」と送ってみた。さも考えて変えてみたフリをしたが、練習で弾いたのをまったく変えずに送ったのだった!
すると、案の定「すごくメロディックでいいですね!本番これでお願いします!」と返信があった…。
主張を通すタイプのバンマスさんだったので、そこで一歩引いたようには思えない。やはり自分が歌って弾くのに夢中でギターソロなんて聴いてないのに、「フライングVは激しい音を出すはず」というイメージだけで「激しいのはちょっと…」とリテイクを要求してきたのだった…。で、あとでソロだけ改めて聴いたら「メロディックで良い」とか言うのだ。
別に怒りも湧いてこず、こりゃーあとでネタにしよう…くらいしか思わなかった。まあ、もう大人だからね。俺も丸くなったものだゼー。そのバンマスに対して別にじじいふざけんなよ!とか全然思わなかった。もう全然。
そういうわけで、その頃からお呼ばれしたとき用に変形じゃないギターを持っておこうと思ったのだった。
最初に買ってみたのは同じGibsonの赤いSGだった。人間椅子の和嶋慎治も使っているし、音もFlying Vに近い。
しかし、メインギターでもないのにそんなにお金をかけなくてもいいやと思った僕は、ヤフオクに格安で出ていたものをさっさと落札して手に入れたのだった。
出番が近かったので仕方なかったこともあるが、これが安物買いのなんとやらで、ひどいギターだった。
ギターのキズ自体は大して多くないんだけど、ネックとボディの間に亀裂が入っていた。そして、ヘッドも折れかかって変な接着剤でつけたような跡があったのだ。あまりにもひどいので返品しようかとも思ったのだが、よく見ていると大して弾き込まれた様子もなく、何度も落としたか、叩きつけたりしないとヘッド&ネック折れなんてことにはならないと、なんだか可哀想になってきた。
暴力を受けた楽器を保護したつもりになったのと、まあネック折れなんてマイケルシェンカーファンにとって見れば大したことないやと思い直した。
そこで行きつけのリペア屋さんに修理を頼んだ。これは……大変な目に遭ったギターですねと言われたけれど、接着剤がトラスロッドのところまで流れ込んでいたのをきれいに取ってもらい、調整もしなおして、一応使えるギターになった。本当にヘッドをしっかり直したら4万円ほどかかるようで、そうすると手に入れた値段を超えるので、そこまでする必要はないか、セカンドギターだし…と思った。ところが…
そのあと、しばらく弾いていたら何もしていないのにペグ(ヘッドについている弦を巻くネジ)がポロっと落ちた!
もうやだ!まともなギターが欲しい!
と、思ったのが今の時点である。ボロボロSGは一応、直そうと思ってペグも新しいのを買ってあるが、次にどこが壊れるか分からない。
今のところセカンドギター候補として考えているのは、
・変形じゃないギター。できればストラトシェイプで、善良なイメージを与えるもの。
(やだあの人、メタル!?と思われないことが重要)
・アーティストモデルではない。
(ギターに特定のイメージがあるとロクなことがない)
・赤い
・メタルな音が出せる。
と、まあこんなところである。ギターは赤いのがカッコいい。これはもう絶対。他の色とか買う気起こらない。
そして、メタルな音が出せないとギターを弾く意味自体がない。なぜならハードロック/ヘヴィメタルはこの世で一番優れた音楽だから!他の奴は演(や)るが、俺は殺(や)る!
どんなジャンル、どんな場面であろうがオーバードライブしたエレキギターの音が最高だということを知らしめてやろうと思います。
あのバンマスじじい許さねえからなこの野郎!
(今回は口が悪くてすみませんでした…)