2016年11月22日火曜日

サウンドテスト0008 Fluffing Moogles 編

 11月19日、ゲー音部によるイベント「サウンドテスト0008」で、僕らのバンドFluffing Mooglesは2番目に登場したのでした。
 人前で音楽をやるというのは僕にとってはすごく特別な機会だ。たとえば僕の仕事には1パーセントも関係ないところだし、普段の生活においてさえも、ギターを取り出した瞬間に娘(束縛系:5歳)には非常に嫌がられ、向こうの部屋にいても走って来てギターのペグを回すのである。連鎖を組もうとした瞬間に2連鎖でお邪魔ぷよぷよを落とされるようなやり切れなさだ。その僕がちゃんとしたバンドメンバーを組んでお客さんの前で演奏できるというのだから、この機会を逸するわけにはいかない。
 
 ドラマーをかって出てくれたchihiroさんはとても忙しい人で、深夜になって帰ってきてなかなか子どもと一緒に遊べないと言っていた。この人なら音楽ができる時間の特別さを分かち合えると思った。メンバーとスタジオに練習に入ったのは1回、それ以外は当日の直前に1曲ずつ合わせただけだけど、chihiroさんが曲をちゃんと組み立ててきてくれたので、すごくスムーズに行ったと思う。なにしろ、曲を覚えてきてくれる上に叩き方も固めてきてくれるドラマーって僕は初めてだったもんだから、てまりと二人ですごく嬉しかったのだ。ティナのテーマはchihiroさんの気合いがすごく入っていて、お客さんからも「あの曲のドラムすごく良かったですよね」と言われた。僕に言わないで本人に言って欲しかったのでここに書いておく。それはキメ部分だけでなくて、曲全体へのイメージができていたから、どこをどういうノリでいくべきかというビジョンがあったんだと思う。
  
 僕の中では今回は脇役に徹するというテーマがあって、フロントはてまりに任せていたので、本当はMCもやりたくなかった。そうじゃないと友達のお姉さんに無理やりピアノを弾いてもらって出た高校生の学園祭みたいじゃないか。でも、ぜったい無理と言われたので仕方なくしゃべることにした。小学生のとき高橋名人が好きだった話とか、ピアノをやっていたせいで連射ができて「一郎(てまり弟)の姉ちゃんすげー」って言われた話とかすればいいのに。そうしたら毛利名人の方がイケメンなのに暑苦しい高橋名人が好きとかぶっ壊れてるよねと突っ込んだのに。

 

 僕はエレキギターを弾いているけど、パラメキア帝国ではほとんどバッキング(伴奏)というものをせず、メインメロディを弾いている。だから曲の最中で音量を上げ下げする必要が今までなかった。そして音色に関しても、オーバードライブの音ひとつだけで、クリーンのアルペジオなんかやることは無かったのだ。それが今回は両方やることになって、一番苦労したのが音量についてだった。歌を食うほどにでかい音で弾いていてはいけないし、リードになったらなったでいつも通り大きな音で弾かないといけないし…
 もうこれは別の楽器を弾いているイメージで行こう!と、まず自分の長らくのメイン楽器であったフライングVではなく、「目立たずギターを弾きたい時用」の最近買ったPRSのCustom24というギターで弾くことにした。また、エフェクターはいろいろ迷ったのだが、Marshall直結にした。迷った結果それか…と思うかもしれないけど、正直にやるのが一番だと思う。そして、ソロやリードの時だけアンプのセンドリターンにクリーンブースターを入れて、それを踏むことにした。これが劇的に音量が上がるので、アンプの方を小さくしておいて、ソロでガッと前に出ることができるようになった。これはものすごく便利である。…しかし、エフェクターそのものをふみ慣れていない僕は手で弾く以外にやることができてすごく混乱することになった。
 それに加えて、このPRSのCustom24はピックアップ(ギターのマイク部分)の切り替えがゴリゴリ回す式のスイッチになっており、とっさに変えることができない。しかも右回しでリアに、左回しでフロントになるという混乱を呼ぶシステム。これには閉口した。テキサスでブルースを弾いてるオヤジなら小指でちょいと回せるのかもしれないが、魔導師レベルの力しか持たない僕にはとても無理だった。本番でも回せなくて一曲目のソロをリアのままで弾いて高音が目立ち非常に気持ち悪かった。あと、ティナのテーマの間奏から元にもどるとき、ピックアップの切り替えがうまくいかずに、無理して回したらちゃんと弾けなかった。はらたつ。

 さて、そんな個人的なバタバタ感とはうってかわって、演奏全体を見たらけっこううまくいったのではないだろうか。それは良いメンバーに恵まれたということが一番大きいと思う。本番直前に、ろみさんが(彼のギターもPRSで)「ダブルPRSだから写真撮りましょう」と言ってきて、ああ…僕はこの人に無理して合わせてもらっただけじゃなくて、ちゃんとこのバンドで楽しんでもらえていたんだなと思ってジーンと来た。メタル者同士だけれど、たぶん二人とも今回のライブは体感メタル度5パーセントくらいだと思う。僕なんかギターもいつもと違うし、黙っていたら絶対メタルの人だと気づかれなかったと思うんだけど、どうなんだろう?なんで弾いた瞬間にメタルと思われたんだろう?
 
 1曲目、MotherのAll that I needed(was you)。この前に僕は紙芝居を朗読した。娘たちが寝たあと、真っ暗な部屋に電気スタンドをつけて、娘の絵の具を借用して描いたものである。さば夫さんがそれに合わせてMotherのタイトル曲を弾いてくれた。とっさにこういうことができるのは流石だ。僕はこのライブ中ずっとさば夫さんの横でギターを弾いていた。自分で前に出て弾こうと思っていたところにエフェクターが大量にあって(転換を早くするために他のバンドのエフェクターがステージに置いてある)、前には出られなかったんだけど、結果的には彼の横で良かったと思う。僕がバカなことを言い続けたMCの最中、ずっと笑っていてくれてすごく安心した。どんなにMCで外して客席が凍りついたとしても少しも寒くないわという気持ちになれた。ピアニストとしての技量に注目がいくけれど、やっぱり北海道から人がたくさん付いてくるのは彼の人柄あってのことだ。
 
 そんなさば夫さんのピアノが一番冴えたのは2曲目のティナのテーマだと思う。僕が作ったアレンジでは、ピアノは添え物のような感じだったし、どうやって弾くのか分からない楽器を無理やりやっているのですごく不自然だった。ピアノソロから始まるこの曲は、Fluffing Mooglesでやりたいと思ったことを一番ストレートに形にできたように思われる。そしてSugiさんが僕の作ったベースソロを弾き込んできてくれたのは嬉しかった。Sugiさんはこのバンドをやるに当たって、バンド全体の音像を俯瞰しながら音を出してくれた。スタジオ練習後に僕が音像やギターの分担などで相談した時も率直な意見をくれたのであった。さば夫さんが、ティナのテーマの中間部は雪が降っているイメージだからベースが動かない方が良いのではという意見を言っていた時も、じゃあそうやってみようかなという柔軟性。大人だ。
 MCでも言ったけれど、ティナのテーマはパラメキア帝国用にアレンジを作った後、お蔵入りになっていていつか演りたかった曲。十年前に作ったアレンジだけど、ジャンル的にはゴシックメタルを念頭に置いた感じ。リードギターとボーカルの兼ね合いも合わせて、こんなにライブでやって楽しい曲になるとは思わなかった。

 3曲目はカオスメドレー。なんでカオスかと言うと、一曲目がファイナルファンタジーのカオスの神殿で、そこからめちゃくちゃな展開が続くから。このバンドの曲決めはチャットでやったんだけど、みんな好きな曲、やってみたい曲があって、当然全部やるわけにはいかなかった。だから一人一曲ずつ全部入れてメドレーにしようと思ったのだ。一人ずつの思い出の曲がないとバンドとしてやる時に張り合いが無いもんねぇ。しかし、それぞれ全く違うジャンルの曲を普段聴いているし、通ってきたゲームも全然違う。かくして「本当にメドレーとしてつながるのか!?」という選曲になった。
 そして2曲目はろみさんリクエストのゼノギアス「飛翔」。ライブということで、原曲のオーケストラのイメージやリズムは一度おいといて、ボーカルをメインメロディに据えてノリの良いエイトビートに変えてみた。飛空挺の曲みたいな爽やかさになったと思う。
 3曲目はさば夫さんのサイバーコア(ステージ1)。このゲームには僕がPCエンジンを友達に借りたとき、シューティングの中でガンヘッドやスーパースターソルジャーよりもやり込んだ思い出がある。ゲー音部の飲み会でさば夫さんと話していたときに、「こんなゲームありましたよね」と言ったら通じて、「知ってる!?」と固く握手したのだ。僕ら意外にぜったい誰も知らねえと思って演奏したらお客さんの中に知ってて喜んでくれた人がいた。演奏ももちろん中学生の自分に届けるつもりでやるつもりでいたけれど、MCでしゃべったら反応があって、その人のために心をこめて弾こうと思った。この先、僕ら意外に誰も演らないんじゃないか…
 4曲目、Sugiさんリクエストのワギャンランド2ラスボス。これが高速変拍子を含む難しい曲であった。Sugiさんはアストゥーリアス好きなので本当はもっとプログレッシブにアレンジしたかったけど、練習時間とかメドレーの尺を考えたら無理であった。残念…。でも、この曲ではてまりのボーカルが無理やり乗ってくるところがとても良かったと思う。これをバンド演奏ソプラノボーカルありでやるのも絶対僕らだけだと思う。
 そして5曲目…chihiroさん推薦のソウルブレイダーエンディング「恋人のいない夜」。なんでこれで締めなんだ!というメチャクチャさ加減。作曲者タケカワユキヒデがCDで歌っちゃった曲である。ゲームソングによくある「ゲームと全然関係ない歌詞」なのだ。こういうのの困るところは特別にボーカルバージョンで収録!みたいなこと言っちゃってて、CD買った人がインスト聞きたいのにそれは入っていない…という。この曲をてまりが一所懸命練習してたのは笑った。

 メドレーが終わって最後の曲はテイルズオブファンタジアの「夢は終わらない」。これは僕がどうしてもやりたかった曲。これを聴いていると正体不明の胸に迫ってくる感じがあって、ああ、切ないってこういうことなんだなと思うのです。だからバッキングはものすごく凝って作った。ダンスビートな曲なので、Extremeみたいにノリの良いバッキングにしたかった。…が、この曲だけボーカルの声が普通の高さなので、マイクの音量が変わらないと歌がまったく聞こえない。リハでは、この曲だけボーカルを大きくしてと伝えたけれど、無理でした…。このバンドのボーカルは基本ソプラノ歌いなので、歪ませたギターでゴリゴリやってもそれを飛び越えていく音域なわけだけれど、これだけ普通の女の子ロックバンド的な音像が必要、ということだ。これはリハーサルをちゃんとやったり、ギターもちゃんと聞こえつつボーカルを邪魔しない弾き方にするアレンジを考えたり、改良の余地がたくさんあると思う。またいつかしっかりボーカルが聞こえる状態でやりたい。

 ボーカルに関しては、このバンドを考えた時から「ちゃんと歪んだギターとマッチするだろうか」という懸念があった。たとえばNightwishとかTherionみたいにソプラノボーカルとメタルバンドというのは存在するんだけれど、もちろん音響面では長いバンドの歴史の中で磨いてきたものだし、アレンジからしっかり練ってあるので、そういうことが僕らにできるのだろうか、と。ギターを下げればいいじゃんと思うかもしれないけれど、メタルリスナーにだけ分かる言い方をすると、ソプラノ部分に関してはNightwish、地声で歌う部分に関してはWithin Temptationみたいにやりたかったのさ。無理なことは無いと思うのだ。今後の改良次第で。
 そんな風にこだわるには理由があって、てまりのボーカルってただ高くて大きい音が出るとか、ゲームミュージック界隈で同じことをしている人がいないとかそういうことではなく、表現として魅力的だと思うのだ。僕は女性ボーカルの曲がすごく好きで、はっきり言ってシンガーについては「こうあってほしい」という理想がすごく高い。けれど、初めて同じステージを踏んだ仙台のライブハウスで、ああ、これは自分がギターでもがくのと同じくらいに、なんとかしてこの声を人に聴いてもらいたいなと思った。
 練習が足りない時の彼女の歌のひどさはそりゃーもう頭が痛くなるくらいヤバい。だけど僕みたいに夜起きて部屋で練習するわけにもいかないから、僕が娘ふたりを見ている間にCDを流せるカラオケボックスに行って、一所懸命練習していた。練習音源を聞かせてもらったけれど、今回あんまり聞こえなかったと思われる「夢は終わらない」もすごく良かった。

 総じて言うと確かに自分のギター演奏上の失敗や、アレンジを含めてもっとよくできたというところはいっぱいあったけれど、終わった瞬間に後悔よりも「いい音楽ができた」と満足できるバンド演奏は、僕史上たぶん初めてだと思う。それくらい今回は楽しいライブだったし、次への自信につながるいい体験ができた。
 Twitter上ではあんまり僕らの演奏に関する意見や感想って見なくて、メンバーからの感想だけな気がするんだけど、本番が終わって楽屋に引き上げたまさにそのタイミングで、このライブの主催をして今回燃え尽きるんじゃ無いかというくらい頑張っていたしんざきさんに「いやー、本当に素晴らしかった。ありがとうございます」と褒めてもらった。実感のこもった表情で言われて、僕がそう思いたいだけかもしれないけど、社交辞令じゃなく見えて…こんなに頑張っている人に言われるというのは、これは誇って良いことだと思う。
 そんなこんなで、いい気分になっていた僕は打ち上げ会場でFluffing Mooglesのメンバーに向かって、烏龍茶しか飲んでいないシラフの頭で「こんなこと言って変かもしれないけど、僕らって、けっこうカッコよかったんじゃないかな」って言ってしまった。
 
 唐揚げを食べながら、回ってきた会場アンケートに目を通していたら、こんなのが言葉があった。無断でこんなところに書いてしまってすみません。
「10年ぶりくらいに死神博士さんとてまりさんの音楽にふれて、なつかしくもうれしい気持ちになりました。今日は楽しかったです」
 ああ、本当にやってよかった。

サウンドテスト0008に出てきたぞ。

 ライブ後がっつり風邪をひいてしまって、本当にテイルズオブファンタジアのタイトル画面のようなしわしわな声になってしまいました…
 サウンドテスト0008にご来場の皆さん、当日はどうもありがとうございました。そしてゲー音部の方々、最高の1日になりました。ご一緒させていただいて本当によかったです。

 1日で9バンド、計5時間半のライブ。これはゲームミュージックにおけるラウドパークか!?みたいなノリで、演奏時間もさることながら、バラエティ豊かなサウンドがみっしり詰まった濃密なイベントになったと思います。


 1バンド目はPolygon Wings。EWIやフュージョンが好きな人が集まってカッコイイことやろう!というバンドで、まとまった音と確かなテクニックでお客さんのノリも1バンド目から最高潮に。Moon over the Castleの最中に舞台袖で司会のAKさんがすごく実感のこもった表情で「カッコイイ……!」って言っていましたが、ゲー音部の中にもお客さん側で盛り上がりたい人がたくさんいたことと思います。(当日は満席となったため、ゲー音部員は壁際で5時間立ちっぱなし、あるいはドアの外にいざるを得なかったのであった…)俺たちが一番好きな音はコレで、一番好きな音楽はコレだ!という愛情がストレートに出ていて、実はこの日一番男らしさのあふれるバンドだったと思います。

 そして2バンド目は僕らFluffing Moogles。あとで書くので飛ばします。実はこの日、イベント主催のしんざきさんには後ろ方のすごく良い番手をもらっていたのですが、この順番に変えていただきました。夫婦で参加だったため、娘たちを北海道から来てもらったおじいちゃん&おばあちゃんに預けてきたのです。早く帰らないと2歳&5歳の娘ふたりが「ちから99」「ちせい1」でキャプテンをなぐり殺す反乱軍と化すのでした。この日僕らの出番が終わった瞬間、てまりはメンバーや共演者との挨拶もそこそこに会場を出て自宅へダッシュしました。(出してもらったのに失礼なことをして申し訳ないと言ってました)

 3バンド目、ベスの極み翁。1、2バンド目の大音量とうってかわってベースのみでゲーム音楽を演奏するというバンドでした。「今日はなんでもアリなんだ」という流れを作ってくれたのはこの人たち。ただ腕組んで突っ立っている人がいるとか、指揮者がいるとか、その指揮者を誰も見ていないとか、見た目でのインパクトも合わせて勝負していたし、お客さんからは笑い声がたえず、がっちり心をキャッチしていたと思います。ファミコン版ドラえもんの魔境編後半の曲は個人的に大好きな曲で、これを聴いていたらネタ的な側面ばかり目立ってしまうけれど、表現したい音楽があるんだなーいいなーと思いました。…しかしそれに続いてラストに演奏されたのは1942。みんな思ったことだろうけどあえて言わせてもらうよ。なんでベースだけでゲーム音楽やっといて、ベースが無くてもいい曲をやるんだよ!

 4バンド目、レトロゲーム弾き語り。僕はブルーハーツと完全に無縁な生き方をしてきたので曲は知らなかったけれど、声を聴いた瞬間この人甲本ヒロトに声似てるなーと思った。曲が終わった後にブルーハーツの曲の翻案と聞いて納得した次第でした。実はこの日、9バンドあった中で僕が一番いいなと思ったのは次の弾き語りバージョン「ボンバーキング」。間奏含めてアレンジもとっても良かったし、ギターとボーカルのサウンドもすごく雰囲気があった。ジャンルは全然違うんだけど、AnathemaのDreaming Lightみたいなイメージ。ギター1本持って勝負しに来た彼を僕は笑う気になれなかったけど、水を飲んだりMCでテンパったりしている時にお客さんから笑いが起こっていた。(ここら辺は僕が他の人とズレているところなんだろうけど)。第二弾・三弾がこれからあるとしたら、僕個人の感想としてはキャラを生かすのではなくて、本気で演奏して本気で吠える路線でいってほしいな。

 5バンド目、Enpanadillas。ゲー音部の民族音楽チームで、楽器もケーナ、サンポーニャ、二胡などバラエティ豊かなユニットでした。この日の主催はしんざきさんで、僕が今まで出たどのライブイベントよりも細かい部分がかっちりと決まっていて、出る側としては至れり尽くせりすぎてびっくりだったのですが、こういうことができるのって、何よりもしんざきさんが自分のバンドにかける情熱があってこそだなぁと思いました。だから、こんなに多方面に気を遣って、倒れたりするんじゃないだろうか…とか、当日演奏だけするつもりでノコノコ行くのは申し訳ないとも思っていたのですが、Enpanadillasの音を聴いたら納得。この音を出したいという思いに支えられた上での八面六臂の活躍だなぁと思われました。クロノアのBaladium's driveって、ものすごくいい場面で流れる曲なんですよ。死を乗り越えて、少年が勇気を持って立ち向かう曲です。だから太鼓の達人でやるのってどうなの…と思ってしまうくらいなのですが、この曲を本物の楽器で魂を込めて演奏しているのが聴けてよかった。彩りを添えていた…というよりもはやメインといっても良いようなメイジソさんのパーカッション。この人の1音1音をすごく大切に鳴らしている感覚は、やっぱり今までの演奏歴から来るのだろうか。音楽って、ここしか無いというタイミングでこれしかないという音を響かせることの積み重ねだと思う。僕はギタリストだけど見ていて本当に見習いたいと思った。

 6バンド目、TAKEKEN with Friends。Fluffing Mooglesでキーボードを弾いてくれたさば夫さんがここでは華麗なジャズピアニストに変身…というか、こっちが本来の姿であってギターの音がでかすぎたりMCでずっとバカなことを言っているところでむしろ我慢してたのかもしれないけど。演奏は熟練の域に達していて、ゲーム音楽をひとつの手段としてジャズの世界観に落とし込むという技をやってのけていました。これだけの音を重ねておきながら心地よさを感じさせるのは、1分ギターを弾いただけでクドいとかうるさい、いつ歌始まるの?と言われてしまうHR/HMとは対極にある世界だ…。セッションではリーダーのけんたろさんが、自分が前に出るよりもメンバーをすごく大事にしていることが伝わってきていいなと思いました。え?僕はバンドやるときは自分のことしか考えていませんよそりゃ。

 7バンド目、スヌーピーズ。キーボードの音がもうセガっぽいというか、メガドラっぽいという感じがしました。ギターやドラムが入っていてピアニカがメインというのも初めて見ましたがこのバンドのサウンドを特別なものにしており、リハではなかなか音が前に出てこなかったけれど、本番はバッチリでしたね。フロントのコブさんと打ち上げで隣になったんですが、その日の出来をすごく気にしていて、そんなこと全然ないのに…と思いました。とても良い演奏だったし、バンドのコンセプトもはっきりしていて個性の強い9ユニットの中でも存在感があったと思います。

 8バンド目、札幌ゲー音部。さば夫さん率いるいずれも演奏の上手なメンバーの揃ったバンドでした。イトケンメドレーはベタな選曲ではなく、サガフロンティアのバトル#4や聖剣伝説のバトル2をやっていました。カッコよかった!バトル#4のイントロってすごくその場の雰囲気を持っていくのでカッチリ演奏しないと難しいと思いますが、その辺はビシッと合っていて、このクオリティならわざわざ東京まで来て演奏してもおかしくないよなぁと思うのと、札幌ゲー音部のチームワークの良さを感じました。ドラクエ4のダンジョンメドレーで効果音に気持ちの悪い音が入っていて、最高にカッコ良かったです。ドラクエのダンジョンって、だんだんMPが尽きて行って、ものすごく心細くなったっけ…と思い出しました。

 9バンド目、ファミコンやろうぜ。この辺でお客さんも長丁場に疲れ果てているだろうと思ったら、ほとんど誰も帰る人がいない…本当にゲーム音楽を愛している人が集まった良いイベントに出させてもらいました。このバンドはリーダーの麺さんが、小学四年生のころのゲーム体験を再現するシナリオを書いていて、メンバーがセリフを言いながら曲を演奏していく形式でした。楽器も鼻笛、ピアニカ、アンデス、カリンバ、ディジリドゥ、バイオリン、セガ(テルミン)、カホン、スーファミ…など(これで全部?)というくらいバラエティに富んでいました。お金持ちでたくさんゲームソフトを持っている友達の家にみんなが遊びに来るという設定で、そこにいる誰もの胸が苦しくなったことでしょう。あの時の友達付き合いって、「ファミコンいっぱい持ってる」がひとつの判断基準としてそこにあったと思います。僕の周りでも「あいつ嫌なやつだけどファミコンやりにあいつんち行くか」みたいな流れは確かにあった。なんかそれを思い出してしまったけれど、これは「ファミコンやろうぜ」の再現したい世界が確かにそこにあって、それがすごく観ている側にリアルに訴えかけてきたということだと思う。それより「ファミコンやろうぜ」が屈託なく明るいメンバーばかりで、ああ、こういう小学四年生でありたかったよなーという気持ちにすり替わって行ったのでした。…しかし、ひとつだけ注文させてもらうとすると、男子の家にあんなに女子がたくさん遊びに来るって、そりゃ人生の一大イベントじゃないのか!?その辺、すごくさらっとしているように思った。ファミコン好きな女子なんて僕の周りにはいなかった。せっかくファミコン好きな女の子が来ているんだから、わざとケンカして女子の目線を気にしたり、いつもの何割か増しで悪ぶっているメンバーがいたりしても良かったじゃないか!…と思って観ていたら、最後にフロントのスーファミを演奏していた人が「そういえばこのあいだ裏ゼルダをクリアしたんだけど…」と、ファミコンうまいアピールをしてきた!すばらしい!このタイミング。すごいシナリオだ!

 これ以外にも、即興演奏コーナーがあってその場リクエストの曲なんかやったりしたんだよこのイベント…。ウソみたいだろ。これで1日なんだぜ…。来なかった人本当に後悔すると思う。
 自分の出たバンドFluffing Mooglesについては別のエントリーで書き直しますのでそっちも読んでね。

2016年9月25日日曜日

久しぶりにライブします!(not パラメキア帝国)

 以前から付き合いのあるゲー音部さんで、セッションではなくライブイベントをしよう!という企画が立ち上がりました。2016年11月19日(土)に、浅草橋のBUNGAJANというライブハウスで行われます。(詳細は以下のサイトをご覧ください。)
 http://kantogeonb.blog.fc2.com/blog-entry-21.html

 この中の「Fluffing Moogles (フラッフィングモーグリズ)」というバンドで、死神博士&てまりが出演します。
 なんだパラメキア帝国はもうやめたのか、とか、イングヴェイのように「ああ、ボブかい?…あいつはクビにした。ソウルメイトが聞いてあきれるよ。奴はアスホールだ!」とかそういう展開ではありません。あんな上手にギターを弾けてなんでも僕の言うこと聞いてくれる人をバンドから追い出すわけありません。
 ゲー音部で部員が企画を持ち寄り、メンバーを部内で募って成立したバンドがライブに出る…という流れだったので、そこに乗っからせてもらったのです。
 僕は当然ですがギター、てまりは今回キーボードなしのボーカルのみを担当します。
 もう一人のギターにはゲー音部きってのHR/HMギタリストでジェミニ誘導のリーダー、ろみさん。
 ベースは関西ゲー音部、『Sound of Ciel』、ゲーム音楽バンド『恵美須町』で活躍中のSugiさん。
 ドラムはゲームレジェンドの指ドラムでもおなじみ、関東ゲー音部のchihiroさん。
 キーボードは札幌ゲー音部や伝説のゲームミュージックバンド「コロポックリ」でも活躍していた、さば夫さんが担当してくれます。
 これはたとえて言うなら、そう…ファミコンジャンプのようなオールスター感だぜー!(不吉な比喩)

 このイベントには、他にも
 ウィンドシンセをメインにしたフュージョンサウンドの「Polygon Wings」
 ベース3本でゲームサウンドを再現する画期的な試みである「ベスの極み翁」
 ゲー音部にしかわさんのソロ活動「レトロゲーム弾き語り」
 ワールドミュージック的ゲーム音楽を本格的に聴かせる「民族音楽チーム」
 凄腕プレイヤーのアドリブセッション「TAKEKEN with friends」
 謎に包まれたゲーム音楽バンド「スヌーピーズ」
 満を持して関東に乗り込む「札幌ゲー音部」、そしてこれぞゲー音部!のサウンドを奏でる「ファミコンやろうぜ」
 …と、1日で9ユニットの演奏を楽しむことができます。また、恒例のリクエストコーナーもあるようなので、僕もFFとかロマサガとか昔のイースとかリクエストされたら弾きまくるぞー!…って、ゲー音部はそういう方向性じゃないかもしれませんが。とにかく古今東西のゲームミュージックが好きな人ならきっと忘れられないイベントになることと思います。

 さて、今回僕が出るFluffing Mooglesですが、「ソプラノボーカルとゲームミュージックの出会い」ということでやってみようと思っています。もともと歌詞のあるものはロックバンド的なアレンジを、歌詞のないインスト曲はボーカルを楽器の一つとして組み込んで演奏します。インスト曲に歌詞をあてはめるのではなく、主旋律や副旋律をボカリーズで…という感じです。
 曲はいつも通りファミコンやらスーファミから選んでいますが、メンバーで話し合って決めたので、けっこう真剣にゲームミュージックのメロディの良さを楽しめる線になっています。全部僕が選んぶのだったらボコスカウォーズとか、ヴォルガード2とかやってソプラノボーカルで「8方向〜はーちほうこう〜♪」とかやったのかもしれませんが、ホント真面目な選曲です。きっと楽しんでもらえると思います。
 
 実はパラメキア帝国の活動をしている時に、いつも思っていたのは、ボーカルをあんまり生かしきれてないよなーということです。だんだんボーカルが前面に出るアレンジも考えていってはいるのですが、たとえて言うと、作る料理が決まっていないのに食材はある…みたいな感覚もあるのです。これはパラメキア帝国のように「ハードロックでギターインスト」とフォーマットが決まっている中でやるよりも、むしろ一度「ボーカルがメイン」と決めて取り組んだ方が今後に自分でやるアレンジや演奏にも生かしていけるんじゃないかと考えました。

 もともとゲームミュージックは機械が発するものですが、いわゆる昔のピコピコ音にも生の音楽や楽器への指向性は常にあったように思われます。たとえばディスクシステムの音にビブラートがかかっているのを人が聴くとき、それはコンピューターが出す均質な信号の集まりではなくて、機械が「生」を目指して軋む音に変わるのだと思うのです。
 対して、クラシック音楽の中に出てくるソプラノの歌声は、洞窟や教会に音を響かせるためのものであったにせよ、オーケストラの音の壁を乗り越えるためのものであったにせよ、人間が声帯を震わせて自然に発する音声とはかけ離れています。そして、多数の人間が響きを合わせて更に大きな音を発したり、または和音を作ったりするために、均質なものになっていったわけです。
 目的地が正反対にあるものが交差するとき、面白い表現が生まれるんじゃないかなと思って、僕はゲーム音楽バンドにソプラノボーカルが乗ることの意義を感じています。

 まあ、それは勝手に僕が思っていることです。今回は自分のバンドの活動ではありませんし、メンバーはバラバラな場所から集まっているわけだし、今回は概念がどうとかいうよりもとにかくまずは演奏を楽しもう!という雰囲気でやるのが正解だと思っています。僕もとにかく自分がニコニコして気持ちよく弾きたいと思います。各パートの弾き方などもメンバーの皆さんにお任せてしており、実際にメンバーが顔を合わせてリハーサルしてみたら、いまアレンジ案として挙げている曲の感じもまた全然違うかもしれません。イベント名の「サウンドテスト」にふさわしく、新しい人や音の出会いがあることを楽しみにしています。
 
 パラメキア帝国を結成した頃、まわりに同様のバンドがほとんど無くて、仲間を求めて地方に行ったり、ワンマンでやらざるをえなかったり…ということを思い出すと、同様のゲーム音楽をする人たちだけで対バンのイベントが開催されることを本当に嬉しく思います。そして、この日に参加した人は、ゲーム音楽を聴いて懐かしい気分に浸るだけでなくて、ゲー音部の風に触れて「俺もひとつ仲間を集めて何かやってみようかな」とか、もっと言ったら「新しい楽器を手にとって好きなようにゲーム音楽弾いてみようかな!」と思えるような素敵な1日になる気がします。ぜひお越しくださいね。

2016年3月26日土曜日

ギターをもう一本買ってみようかな。

 僕が現在メインで使っているのはGibsonのFlying Vである。メインというか、マトモに使えるエレキギターはこれしか持っていない。ギターを始めた時からこれだったし、ライブも録音も全てこれ一本でやってきた。

 昔はヤングギターなんかを見ていても、僕が好きなギタリスト達はみんな「メインはこれ一本」と決めていた。たとえば、トニーアイオミであれば、このJay Deeとか。


 愛機に対する全幅の信頼ってやっぱり憧れるじゃないですか。自分もこのくらいボロボロになるまで弾きたいと思ってギター買うよね普通。
 橘高文彦だってどんなに煌びやかな衣装を着ていたってボロボロのフライングVを弾いている。マイケルシェンカーだってライブ中ブチ切れて破壊しなければ今も「4」って書いてあるフライングVを使っていたかもしれない。
 だけどそんな伝説のギタリスト達でさえ、最近は新しいシグネチュアモデルが出たり、最新鋭の楽器に持ち替えたりしている。やっぱり昔のギターは昔の音がするものだ。ロックをやっていて聴いた瞬間に迫力不足だと感じられたら勝負にならない。また、ヴィンテージ系の音を出すバンドでさえも、メンテナンスや録音の利便性から新しい楽器を使うことも多いだろう。
 
 僕に関して言えば、当然のことながらプロではないし、昔好きだったギタリストのように「俺はこれ一本」でいいと思ってやっている。これからもメインのギターを変えるつもりはない。
 しかしここで問題が起こった。それは、今さら気づいたのだが僕の顔や風体がどう見ても「フライングVではない」ということだ!
 全然「フライング」な要素がなく、どこもかしこも「V」ではない。困った。

 誤解のないように言っておくけれど、フライングVというのは形に目が行きがちだけれど、音こそが唯一無二のものだ。同じメーカーの他のギターを使ってもフライングVならではの音は出ない。僕もフライングVの音が好きだから使っているのだ。だけど、世間一般の認知から言ったら、



こうなんだよ!

 使っているだけで、「若気の至り」イメージ抜群。実際、駅で外国人に絡まれたり、自分のバンドでない他のイベントなどに持っていくと(コレしか無いからだが)、「昔はすげー音楽やってたんすか?」「髪さかだてて?」「メイクして?」
……うるせーーー!!!
となる。


 ギターをやっていると自分のバンド以外で、たとえば余興をやってくれとか、連れ合いと弾き語りで人前に出たりとか、そういうこともある。僕は人前に出るために練習をすればどんな曲であっても絶対自分にとって足しになるし、ステージ慣れにもなるので、そういう機会は大切にしたいと思っている。だけどその度にFlying Vのパブリックイメージに悩まされるのだ。

 何年か前のこと。連れ合いの同僚が自分のバンドにギタリストを探していて、頼まれてライブに出たことがある。はっきり言って全然いい曲だと思えなかったけれど、自分がギターソロを弾くんならその部分だけでもめっちゃいい曲にしてやる!と思って、速弾きとメロディを歌わせる部分を組み合わせたソロを作って練習に臨んだ。

 その時もまず、ギターを出した瞬間にお決まりの会話が始まったのだった。そして何度も合わせて、バンマスもOKですありがとうございます本番よろしく!みたいな感じだったので、ニコニコして帰った。
 しかし、家に帰ったら急にそのバンマスからメールが来たのだ。「あの…やっぱりギターソロがイメージと違うので、考え直してもらえます?」と。
 はて、どういうところがどう気に食わなかったんだ?と思ったのだが、「メロディのある曲なんで、あんまり激しい感じのソロはちょっと…」と言うのだ。
 まあ、そういうのって音楽やっていたらいくらでもあることだけども、ひとつ疑問があった。そのバンマスが練習のとき自分が大きな声で歌うのに夢中で、弾き語りもコード見ながら必死にやってたので、あんまりソロなんて聴いていなかったように思えたのだ。
 その時は録音機材なんて持っていなかったので、ギターソロを打ち込んでメールに添付し、「では、こんな感じでどうでしょう?」と送ってみた。さも考えて変えてみたフリをしたが、練習で弾いたのをまったく変えずに送ったのだった!
 すると、案の定「すごくメロディックでいいですね!本番これでお願いします!」と返信があった…。
 主張を通すタイプのバンマスさんだったので、そこで一歩引いたようには思えない。やはり自分が歌って弾くのに夢中でギターソロなんて聴いてないのに、「フライングVは激しい音を出すはず」というイメージだけで「激しいのはちょっと…」とリテイクを要求してきたのだった…。で、あとでソロだけ改めて聴いたら「メロディックで良い」とか言うのだ。
 別に怒りも湧いてこず、こりゃーあとでネタにしよう…くらいしか思わなかった。まあ、もう大人だからね。俺も丸くなったものだゼー。そのバンマスに対して別にじじいふざけんなよ!とか全然思わなかった。もう全然。


 そういうわけで、その頃からお呼ばれしたとき用に変形じゃないギターを持っておこうと思ったのだった。
 最初に買ってみたのは同じGibsonの赤いSGだった。人間椅子の和嶋慎治も使っているし、音もFlying Vに近い。


 しかし、メインギターでもないのにそんなにお金をかけなくてもいいやと思った僕は、ヤフオクに格安で出ていたものをさっさと落札して手に入れたのだった。
 出番が近かったので仕方なかったこともあるが、これが安物買いのなんとやらで、ひどいギターだった。
 ギターのキズ自体は大して多くないんだけど、ネックとボディの間に亀裂が入っていた。そして、ヘッドも折れかかって変な接着剤でつけたような跡があったのだ。あまりにもひどいので返品しようかとも思ったのだが、よく見ていると大して弾き込まれた様子もなく、何度も落としたか、叩きつけたりしないとヘッド&ネック折れなんてことにはならないと、なんだか可哀想になってきた。
 暴力を受けた楽器を保護したつもりになったのと、まあネック折れなんてマイケルシェンカーファンにとって見れば大したことないやと思い直した。

 そこで行きつけのリペア屋さんに修理を頼んだ。これは……大変な目に遭ったギターですねと言われたけれど、接着剤がトラスロッドのところまで流れ込んでいたのをきれいに取ってもらい、調整もしなおして、一応使えるギターになった。本当にヘッドをしっかり直したら4万円ほどかかるようで、そうすると手に入れた値段を超えるので、そこまでする必要はないか、セカンドギターだし…と思った。ところが…
 そのあと、しばらく弾いていたら何もしていないのにペグ(ヘッドについている弦を巻くネジ)がポロっと落ちた!
 もうやだ!まともなギターが欲しい!

 と、思ったのが今の時点である。ボロボロSGは一応、直そうと思ってペグも新しいのを買ってあるが、次にどこが壊れるか分からない。

 今のところセカンドギター候補として考えているのは、
 ・変形じゃないギター。できればストラトシェイプで、善良なイメージを与えるもの。
  (やだあの人、メタル!?と思われないことが重要)
 ・アーティストモデルではない。
  (ギターに特定のイメージがあるとロクなことがない)
 ・赤い
 ・メタルな音が出せる。
 
 と、まあこんなところである。ギターは赤いのがカッコいい。これはもう絶対。他の色とか買う気起こらない。
 そして、メタルな音が出せないとギターを弾く意味自体がない。なぜならハードロック/ヘヴィメタルはこの世で一番優れた音楽だから!他の奴は演(や)るが、俺は殺(や)る!
 どんなジャンル、どんな場面であろうがオーバードライブしたエレキギターの音が最高だということを知らしめてやろうと思います。
 あのバンマスじじい許さねえからなこの野郎!
 

(今回は口が悪くてすみませんでした…)

2016年3月20日日曜日

心に自信を呼び覚ますPV


 あるギターの教則本だか雑誌だかで、「あなたがステージで思い通り弾けないのは何故かというと、失敗を恐れる心があるからだ!」というのを目にしたことがある。当たり前だろうが!
 昔、じゃんぷるの最悪に面白くなかったコーナーで、「暮らしの便利帳」ってあったでしょう。「うきわには空気を入れると便利ですよ」とかそういうやつ。ギター講師だかプロだか知らないけど、あなたの言っていることは、じゃんぷるに投稿している小学生と同じレベルですよーだと言いたくなる。それに、悟ったような口ぶりで人の心の持ちように問題があるようなことを言ってるのはヤダよねぇ。

 失敗を恐れてばかりいる僕が、自信を持っていこう!というときに思い出すことが二つある。ひとつは、小学校時代の出来事である。
 六年生のころ、運動会の鼓笛隊にクラスから何人か選ばれることになった。早めに声変わりして音楽の授業が大嫌いだった僕だったが、なぜか音楽の先生のはからいで小太鼓に選ばれた。そして同じく音楽がニガテな友達の小泉君はグロッケンを担当することになった。毎日放課後に残って練習をしていたのだが、合奏になると小泉君の音は非常に小さかった。はたから見ていても顔がこわばっており、子ども心に「自分は小太鼓だから音階が無くてリラックスできるけど、間違った音を叩く可能性のあるグロッケンは可哀想だな」と思っていた。
 そんな時、音楽の先生(定年間近のおばあさん先生だったが、天空の城ラピュタのドーラのような迫力があった)は、小泉君のグロッケンを「ほれ、貸してみな」と言って取り上げた。何をするのかと思ったら、みんなに合奏をさせて、力一杯にたたき出した。そこまでだったら、お手本を見せる普通の指導なのかもしれない。その先生が変わっていたのは、小学生もずっこけるような「絶妙に間違った変な音」をわざと、しかも力の限りでかい音で叩いて、しかも平然とした顔をしていたところだ。
 ちょっとぐらい音を間違えようが気にするな、音が聞こえなかったら君がいる意味が無いんだから。堂々とやれ。
 …と、そんなことを言葉を使わず小学生に納得させてしまったのだ。ベテラン先生のノウハウの一つなのかもしれないが、がぜん勇気を出して叩き始めた小泉君を見ていたら、僕らにとっては魔法のようだった。

 さて、僕がもう一つ思い出すのは、昔から大好きなボーカリストのPVである。
 バンドで担当しているのはギターなので、本当は自信満々で弾いているギタリストの映像を見た方が良いのかもしれない。でも、なぜか僕にとっては超絶ギタリストのパフォーマンスより、歌の方がずっと勇気をもらえるのである。特に、以下のような条件がそろったボーカリストが良い。

 その1 俺の(私の)表現はこれだ!もうこれしかねえ!という迫力と「つぶしの効かなさ」がある。
 その2 誰にもマネできない、または誰にもマネしたいと思われないオリジナリティがある。
 その3 内面から満ち溢れてくる何かを外に向かってものすごい勢いで発散しているせいで、ちょっとおかしなことになっている。
 その4 歌詞と同じくらいに顔で語っちゃってる。

 さあ、音楽をやっている人もやっていない人も是非観て欲しい。きっと俺は俺らしくやっていこうと思えるはずだから。
 

Cathedral - Hopkins (Witchfinder General)

メタル部門:Cathedralのボーカリスト、リー・ドリアン。
クネクネした動きで一斉を風靡し、なぜか当時のメロデス勢のボーカルも相当影響を受けていた。メタルというジャンルは、たいていボーカリストは全身全霊で声を出し、とにかく一所懸命歌ってますよというのを仕草の中でも見せていくスタイルの人が多いと思う。しかし、彼の場合は声もアクションも合わせて一つの身体表現であり、それでバンドの世界観をあますことなく表現していると言えるだろう。
 見所は、魔女狩りの曲なのにイントロから超楽しそうに登場するところ。そして、3:33くらいの、ヒザ曲げジャンプして両手を内側から回すアクション。どうやったらこんなの思いつくんだろう。




Kate Bush - Wuthering Heights

女性ボーカル部門:我らが永遠のアイドル、ケイト・ブッシュ
ライブも凄まじいアクションだしPVもどれも素晴らしいんだけど、とりあえず一番有名なコレにした。まあアクションというか振り付けなんだけど、イントロでなんか変だぞと思わせておいて、フワーと立ち上がって、なんだこれは可愛くみせたいのか変に見せたいのかどっちなんだ!?と観る人をソワソワさせ、0:25で片ヒザが上がるあたりで、「あ…やっぱり変なんだ」と決定的になるのが素晴らしい。そして、0:35で目をカッと見開いて、だんだんこっちに寄ってくるのか!?こえー!となる辺りもいいですよね。
 そして、この目と口…。そうとう自信があって、自分のこと大好きで、と思う人もいるかもしれないけど違う。当時の彼女は自分の歌声に自信がなくて、だんだんとこういう、すっとんきょうな歌い方を脱して、後のアルバムではより自然な歌声になっていくのだ。振り付けに関しても、ステージ上で自由に動けないから、全部動きを決めておくためのものだという。この全身全霊のパフォーマンスが、自信のなさをカバーするものだというところも「失敗恐れ者」にとっては心強い。
 



The Rolling Stones - Start Me Up

男性ボーカル部門:ミック・ジャガー
 疑問に思うのは、ミック・ジャガーのアクションが何の影響を受けていて、何をどうしようと思ったらこうなるのか、ということである。
 コスチュームもすごい。なんなのこれ、紫の…レオタード!?イントロからビシっとポーズをとって、それが全然カッコよくなくて、そして前に一歩二歩と進んでくるのか!?なんだその不審な動きは!?
 この人はもう、すべての動きがキレてるもんなぁ。あと、もうこの顔で正面向いた瞬間に反則みたいなもんだ…。この曲は80年代だから彼も30代後半だけど、なんて落ち着きのなさだろう。多動としか言いようが無いよね。

 これらを観ていたら、たとえば僕がライブで1音はずして、うわー何やってんだ大事な音を、みんなにきっと下手だって思われる…とか、あれだけ練習したのに…とか、目の前にお客さんがいて演奏している最中にそんなこと思っちゃってるのがいかにクダラナイことかと分かる。自分が一番好きな音楽を、一番好みの音色で、自由な音量でやっているんだから、その間くらい好きなようにやったらいいんだよね。