2015年1月19日月曜日

CDの感想ありがとうございます。

 プリキュア観てたら、パティシエ志望の女の子(副主人公)がケーキを一所懸命作って、主人公の女の子に食べさせるシーンがあった。食べている方の主人公はちょっとガサツなタイプなので、ケーキを丼飯のようにガツガツ食べていく。
 で、パティシエ志望の子は実は自分のケーキをコンテストに出そうと思っているので「どうだった?」と感想を聞く。主人公が「え?ふつうにおいしかったけど?」と答え、「なによ!もっとマシなこと答えられないの!私のケーキのこと何も分かってない!」とかなんとか言ってケンカになるのだ。
 そうかー、いまの女の子はこういうのを見て育つのか…というか、この副主人公めんどくさい!と思っていたが、けっこうそれは他人事ではないことに気づいた。僕らも以前そうだった。今なら言えるけど、「ふつうに」おいしいと思ってもらえることって、ものすごく大事なことだ。

 正直に書くが、Twitterなどで先日作ったCDを聴いてくれた人の言葉を見るたび、おおぉー!と思って、1日に3度とか見てニヤニヤしている。もちろんメンバーにもその都度送って、な、すごいだろ!俺たち頑張ったよな。な!と言い、それを見たメンバーも、「おぉぉー!」…という具合である。
 自分のことを検索して、作ったものについて誰か言及している人がいないかなーと探すことをエゴサーチというらしいが、感想をもらえるとあまりにも嬉しいので、いつでもどこでもサーチしたくなってきてしまう。今はそんな検索している暇があったらライブの準備をした方がいいのでやらないが、たとえばライブが終わった後なんかはきっとすごく感想を探したくなることだろう。
 
 人の感想というのはそれだけ甘美なものだ。だって、宝探しのようなものでしょう。探してみたら、「ココは編曲よくないな」とか「ここミスってるよな」という意見もあるかもしれないし、それを見て落ち込むかもしれない。財宝にたどり着くまでのワナみたいなもんで。

 以前はどれだけ喜んでくれる人がいても、ダメだと言う人がいたらガックリきていた。音が悪いというのが一番多かったけど、まあそれは自分たちでもギターやドラムをマイク録りしたり、実力に見合わない音数をアレンジに入れていたりしたので、覚悟していたことだった。だって今、10年前のCDを人に聴かせられるかって言ったら、それは無理というものでしょう。あまりにも荒削りだから。
 そうじゃなくて、「パラメキア帝国はMDで録っているんだよ」とか書かれていて、MD使わねーよ!と思ったり、「これ読んだら音良くなりますよ」って、楽器屋のフリーペーパー(すごく初歩のやつ)を薦められたり、自分たちが頑張っているのとは違う次元でのクレームに気を落としていたものだった。(いま考えると別に真に受けることはないのに)
 
 今だったらもっとフラットな気分で、もし良くない点も挙げてもらったら「そうか、じゃあ次はやってみようかな」と思える気がする。
 それはなぜかというと、今回のCDに、ある程度満足のいくところまで手をかけられたからだと思う。
 もう今の出来で編曲も演奏も満足と言いたいのではない。時間をある程度長く使えたので、CDを一度聴いた瞬間に、「ああー、これを弾き直せれば!ココも!ココも!」とか、「全体をもっとバーンと前に来るすげー音にしたい!ハリウッド級の!でも、そうならない!なんでだ!」という風には思いはしない。だから心の余裕がある。
 それと、自分が大人になったというのもあるかもしれない。人の親にもなったし。
 だって、ギターの練習していたら娘(女帝)にはペグを回されたりギターケースに入られたり、ピックを取られて「どっちの手ーにー入ってるか?」とか言われて、僕が「こっち」と言って、それが合っていると「そっちはダメ!」とか怒られるんだよ。その中で、ちゃんとCD1枚作れたからけっこう僕はエライと思うよ。
 
 もうひとつ僕自身が変わったと自覚しているのは、いま自分たちのやっている音を聴いてくれる人がいるというだけで、それがすごく特別なことだと思えていること。
 コミックマーケットでは、試聴はしても買っていかなかった人も勿論いる。音が好みじゃなかったのかもしれないし、僕とボブの客引きに負けて、しょうがなく聴いたのかもしれない。だけど、本当に言葉の上だけじゃなくて、聴いてくれたことに対して「ありがとうございました」と言うことができた。バンドを再始動して、音がCDという形になって、それを聴く人がいるということ自体が嬉しいのだ。

 twitterにも、すごく丁寧に感想を書いてくれた人も、買ったよーという報告をしてくれた人もいるけれど、一言でもほんとに嬉しい。プリキュアの話に戻れば、ケーキを食べて「ふつうにおいしいよ」という感想でも、僕らには心に響いて聞こえるのだ。
 だって、僕らがいくら音楽や映画やマンガや小説に触れて、すごく感動したって作者に感想を送ったりしないでしょう。アマゾンのユーザーズレビューにすら書いたりしない。だから、感想をクレクレ言うのはおかしいし、エゴサーチしすぎるのも良くないと思っている。その中で、「聴いたんでしょ!感想お願いしますよ」みたいに強いてお願いとかしたり、「このタイミングで感想をツイートしてくださいね。文面はこちらで用意しますので」とか仕組まなくても、twitterに書いてくれる人がいるというのはありがたいことだ。

 アマチュアの音楽活動や、同人誌を書いている人の中には、お金を稼ぐつもりのない人も多いと思う。僕らのCDもそうだ。
 では、何のために活動していくかというと、それは聴いてくれる人がいて、喜んでくれる人がいるということのためであって、それはもう本当に大きな糧になっている。
 何しろ活動を再開したのだって、以前聴いてくれていた人のことや、もらったメールやお手紙、掲示板での言葉を思い出してそれをパワーにしたというのが大きい。どの曲にどんなことを言ってもらったか、ライブの時どんな曲が盛り上がったか、まだよく覚えている。
 CD1枚出しただけ…ではなくて、今後もまた活動を続けていけば、きっと喜んでくれる人も増えると思う。

 本当はこういうところにブログを書いているよりは5月のライブの練習をしたほうがいいんだけど、感想を書いてくれる人に感謝している今の気持ちをまとめておきたくて書きました。


 追伸:CDのライナーノーツにTrack4アセルスのテーマについての記述がすっぽり抜けているようです。実は以前はライナーノーツにすごい長文を載せていたんだけど、今は作ったものに対する能書きみたいなので、無しにしようと思っていました。
 でも、ボブやてまりんに「名物みたいなもんだから、書いた方がいいよ」と言われて書いたのです。それで、書いたらもう仕事を終えた気分になって誤字しかチェックしなかったという…
 誤字どころか記事自体が無いということを、指摘していただいてやっと気付きました。載せる予定だったのは以下の文章です。

track4:アセルスのテーマ(サガフロンティアより)
再びサガフロンティアから、一番好きな主人公のテーマ曲です。妖魔の君の馬車に轢かれて命を落とした主人公が半人半妖の体になって蘇り、寵姫となるはずだったのを宮殿から抜け出して、追っ手から逃れながら旅を続けるというストーリー。人間でも妖魔でもない主人公が、行方も目的も定かでない旅をしている姿が印象的でした。人といるのに孤独を感じたり、それでも生きていかなければならないと思っている人に寄り添ってくれるような曲だと思います。編曲に関しては、アコースティックな編成で、てまりんの歌を前面に出す感じにしようとやってみました。伴奏はアコースティックギター、Aメロはエレキギター、Bメロはクラシックギター、ソロはパラメキア帝国初の試みとしてボーカルが取っています。」




2015年1月10日土曜日

パラメキア帝国10年ぶりの出撃決定。ライブやります!

 ライブハウスではなく、メンバーは欠けたままだけど、10年ぶりに人前に出て演奏します。
 2015年5月24日(日) ゲームレジェンド22 (埼玉県川口市市民ホールフレンディア)
 http://www.geocities.jp/zed_gamelegend/
 にて、ゲー音部さんに場所と時間をお借りしてワンステージ出られることになりました。
 完全な形でとか、爆音を鳴らしてとか、どうせやるなら長いステージを、とか考えていると僕らの場合はいつライブができるかわからない。状況が整うまで待っていて10年間活動できなかったのだから、とにかく今できることをやりたい。
 
 場所はレトロゲームやマイナーゲームに関する活動をしているサークルの集まるイベント会場で、音量の制限もある関係でドラムやベースはテープになります。行くメンバーは僕とボブ、てまりんで、ギター二人とキーボード&ボーカルの計3人。タワーレコードとかでやっているインストアイベントのような感じを想像してもらうと近いと思います。でも、きっと楽しんでもらえるライブになるはずです。

 既に選曲は終わっており、各メンバーがアレンジ作りと練習に入っています。
 もちろんPush Start My Heartからの曲も演奏するとして、あとは旧譜の曲、そしてライブのために用意する曲をバランスよく混ぜたステージにしたいと思っています。音は大きくできなかったとしても演奏は熱く、全編にわたって指がつりそうになるほど弾き倒す、酸欠状態みたいな曲を集めたつもりです。
 「このバンドならでは」というのがどこにあるかと言ったら、それはレトロゲーム音楽への愛情をとことんストレートに表現することじゃないかなと思っています。それは自分の持っている技術内で余裕を持てるくらいとか、感情を抑えて演奏できる範囲内のものではないです。

 僕はもともとすごくステージ前に緊張するタイプで、冷静にやれたことはほとんどありません。以前もライブ前にお客さんがせっかく来てくれて、お菓子とかCDとか差し入れにもらったのに挨拶もままならず、ひたすら運指をしていたり、楽屋にこもったりしていました。ピンポンのドラゴン風間のように、一人の時間を取って孤独と向き合いコンセントレーションを高めた後に最高のパフォーマンスを発揮できればかっこいいのですが、そうならない…。だいたい、1曲目が終わった後、機関銃のようにMCでまくし立てて、バカなことを言ってから会場に雰囲気に慣れていくという感じでやっていました。

 しかし、今回は絶対そうなりたくない。もう大人だから。きっとあのころよりは精神的に成長したと思っているし、人に音を聴いてもらおうと思うより前に、硬くなる自分に勝つことが一番大事だと思う。
 そして、緊張に勝つ最大の方法は練習を積むことだと思い知った。以前はライブの企画、編曲、チケット関係、来てくれるお客さんとの連絡、CDの増産など全部自分でやって、それでも残った時間を全部使って練習すれば大丈夫だと思っていた。だけど、本当に本気になって時間を無駄にせず練習したとしても、それじゃ足りなかった。自分たちの技術に余るくらい難しい曲をやっていたのもあるし、何より万全の練習ができたという自信をステージまで持っていけなかったのが緊張の大きな原因だと思う。
  
 せっかくブログを持っているので、練習の試行錯誤もしながら記録していくつもり。全曲通しで録音してみてどこをミスしやすいのか検討してみたり、弾いている映像を録画してみるのもいいかもしれない。とにかくライブで上手に弾けるように、今から使える時間はできる限り練習に割いていく。

 
 さて、当日に発表の場となる「ゲームレジェンド」は、本当に素晴らしいイベントで、「今この時代にわざわざ」昔のゲームを…というものではなくて、昔のゲームをずっと好きでもいいんだと再確認できる場所だと思っています。この場でライブができるというのは本当に幸せなことで、バンドにとっても特別な経験です。
 また、ゲー音部さんが普通のイベントでライブをするという形態を開拓したところでもあるので、その場を借りるのに中途半端な演奏では申し訳が立たないです。そういった意味でも、今のこのバンドのベストが出せるライブを精一杯作りたいです。

2015年1月5日月曜日

サンリオピューロランドに行ってきたよ。

 娘二人の親となって、女子の領域に立ち入ることが増えてきた。最近言われるようになった「大人女子」とか「理系女子」とかいう女子ではない。れっきとした、ホンマモンの「女子」である。その世界はメルヘンであり、お姫様であり、総パステルカラーでフワフワなのである…。

 そんな女子の総本山であるところの、サンリオピューロランドに行ってきた。
 長女は最近マイメロやキティを好きになったようである。また、近所の公園にはコンクリートのちょっと高い台があるのだが、そこをステージと見立てて勝手に妙な歌をうたい踊り、「お父しゃんはお客さんね。いぇーいって言って」と要求してくる。ではサンリオのテーマパークに行ってパレードでも見たら楽しかろうと思ったのである。




 入り口にはマイメロの提灯が立っており、その前で皆が記念写真を撮っている。その奥にサンリオピューロランドの建物がそびえ立っているのである。先ほど総本山と書いたが、さしずめマイメロやキティの巨大な提灯は御神体といったところか。その神々しさはメッカのようである。ここからムスリムのするように、一歩一歩ひざまずきながら祈りを捧げて歩を進めなくてはならない気さえしてくる。気圧されている父親はよそに、長女は一気に興奮度が上がったようで、神像に向けて猛ダッシュ…。まあ、嬉しそうでよかった。




 中に入ると、これはもう女子は絶対大喜びだろうという景色が広がっていた。そもそもサンリオピューロランドはテーマパークであり、遊園地ではないので、乗り物がたくさんあるわけではない。ただこの空間にいて、ゆるい人形劇を観たり、甘いものを食べたりしてゆっくり過ごすことを目的としているのだと思う。
 入り口そばにおみやげが売っていたので、娘はそこに向かいダッシュ。そういうのは帰りに買うものだよ、と言ったのだが、マイメロのぬいぐるみを欲しいと言って譲らない。帰る時に買うのではなく、「今日はこれを持って遊ぶの!」とあまりに真剣な目で言うので、そういうものか…やはり総本山に来たら女子の言うことにあまり逆らわない方がいいという地形効果も働いたのでガチャガチャなども含め数点買ってあげた。
 
 売店の店員さんやテーマパークの従業員さん達は、一人残らず完璧に、どこから見ても「女子」であった。こういうのは年齢とか関係ない。「女子」なんだよ!なんて言ったらいいの、こういう有無を言わせない迫力。これが巷に言う「女子力」ってものか?(たぶん違う)
 三つ編み、ぱっつん前髪、どことなく残るあか抜けなさ、ギンガムチェック、長いスカート、リボン、フリル、そうしたものが全て備わっていて、なおかつこれが当たり前ですという表情でそこに立って、笑顔を振りまいて仕事をしているのである。
 メタルの世界で言ったら、


 こういう感じ。

 ところで、園内には外国人のお客もいるので、英語ができる従業員さんが多い。しかし、できない人もメルヘンな気合いでなんとかしていた。
 ジャガイモにご飯がつまってて割り箸に刺してある食べ物(なんていうか分からないけど、高速道路で売ってそうなやつ)を屋台に買いにきた外国人のおっさん、やたら店員の女の子に絡んでいて、いちいちそれは美味しいかとか聞いていた。「イッツデリーシャス!」など、超笑顔で答える店員さん。
 外国人客「What kind of sauce ?」
 店員さん「………うーん、、、」(そりゃそうだよな、どんなソースか聞かれても困るだろう。)
 しかし店員さん、ちょっと考えたあと超笑顔で屋台の下から大きなペットボトルを取り出した。
 店員さん「This sauce !」
「業務用、焼肉のたれ」
 うーむ、メルヘンだ。 

 さて、アトラクションは少ないとは言え、ディズニーランドで言ったらイッツアスモールワールドみたいな、人形がたくさんいてゆっくり船で回る乗り物みたいなのはあるので、それなりに並ぶ。キティちゃんと写真を撮るにも並ぶ。
 そういう時には娘の退屈を紛らすことを第一に考えなければならないのだけど、つい習性で周りの人に目がいってしまう。

 前にいた大学生風の青年。一人だったので、彼女に順番待ちをさせられているのか、こういう世界が好きで、一人で来ているのか、どちらだろうか…。小説を読んでいたのだが、後ろにいたのでそれが目に入ってきた。以下、その本文。
 
 ちょっと渋くて すっぱい関係
 だってジグザグ 恋はジグザグ

 なんだーこの文章ーー!?
 マジかー。
 もうこの人、絶対1人で来ている人に決定。
 
 その前にもおじさんが1人で並んでいた。なんかキョロキョロしている。前の青年の堂々とした感じに比べると落ち着かなく見える。そこにお母さんと娘が来て「ありがとうー」と言って列に入っていった。要するにお父さんが順番待ちをしていたのである。
 しかし、そのお父さん、いきなり不満をぶちまけた。
「どんだけ時間かかってんだよ!俺がここにいたら変だと思われるだろうが!」
 かわいそうに、お母さんはすごく申し訳なさそうな顔をしていた。お父さん、誰もあなたを変だと思わないよ。待ち時間が長かったのと、あまりにもこのメルヘン総本山がアウェー過ぎたせいで心細かったんだね。しかし、その娘は完全に父を無視。よし、たくましく育ってくれ。
 
 他にも常連客らしいカップルの話が聞こえてきて、それも面白かった。

 彼女:「私も、もしかしたらここで踊ってたかもしれないんだけどなー」
 彼氏:「面接受けたんだもんね」
 彼女:「そう」
 彼氏:「でもさ、ダンサーさん、みんな細いよね」
 彼女:「………(怒)、でも私も受けたときは細かったし…」
 彼氏:「じゃあさ、人形の方で受ければよかったんじゃない?」
 彼女:「………(怒)」

 この二人、大丈夫なのか!?
 
 なんだかそこにいる人間ばかり気になってしまったが、僕自身もその場を楽しんで、十分にメルヘンな気持ちになっていた。その日は娘を女王のように扱い、連れ合いと「どんなワガママを言っても今日は聞いてあげよう」と約束していたが、そうしたらイライラしたりすることもなかった。

 マイメロの人形劇があったので観ていこうとしたら、ポスターの下に「小学生以上対象」と書かれていた。
 僕:「あ、ここ。小学生未満の方には厳しい内容となっております、って書いてあるよ」
 連れ合い:「いや、『厳しい内容』じゃなくて『難しい内容』でしょ」
 単に僕が見間違えただけなのだが、もし「小学生未満には厳しい内容」の人形劇だったら面白いなと思ってしまった。
 うわー、マイメロちゃんの耳がもげたー。そこからおびただしい量の綿が…
 とか、そういう内容だろうか。

 連れ合いが娘をトイレに連れて行った時、一緒に来た次女を僕がその間だけ預かった。うちでは長女の世話は僕、次女(0歳7ヶ月)の世話は連れ合いと決まっている。次女は僕が抱くと大声で泣き出すのだ。赤ちゃんというのは父親に対して人見知りする期間が必ずあり、長女もそういう時期があったのだが、それが次女はすごく長い。僕も嫌がられてもなんだし、長女も僕が次女を構うと怒るしで、かなり次女とは遠ざけられている。
 それが、なぜか少し機嫌が良くて、その時は僕が次女を抱いても泣かなかった。ああ、メルヘンの国にニコニコした赤子を抱いて立っている、この幸せは何に例えればいいだろう。
 近くに「サンリオピューロランド限定」と書かれたプリクラの機械があった。次女が笑っているうちに二人でプリクラを撮ったらどうだろうか。長女は絶対怒るから隠しておくのだ。仕事で使うノートとかにプリクラを貼ろう。ああ、それでも家で仕事をする時に長女にバレたら大変だ…とか思っていたら、がぜんプリクラを撮りたくなってきた。
 しかし、僕はプリクラを撮った経験がほとんどない。人に連れられて撮ったことならあるが、自分でお金をいれて撮ったことは一度もない。写真を撮った後に何か文字を入れたり、ラクガキをしたりするんだよな、と思ったら急にハードルが高く感じられてきた。撮りたい…が、このプリクラの前に付いた「すだれ」が僕には重い!
 そうして機械の前をウロウロしていると、店員さんが寄ってきた。「かわいいねー」などと言って次女のほっぺを触り始めた。女の人にはあまり人見知りしないので、やはりニコニコしている次女。
 なんだよ…俺はこの子とプリクラ撮りたいんだよ。あっち行けよ「女子」!とか思って、もちろんそんなことも言えずグズグズしていたら娘と連れ合いが帰ってきてしまった。やはりプリクラを撮るには女子力が足りなかったようだ。
 

 その日のハイライトは、やはりパレードだった。
 始まる小一時間前から席取りをしている人も多く、まともな席で観られないかと思ってグルグル回っていたら、けっこう良い場所があったのでそこに娘と座った。
 キャラクターが登場する前からパレードは大盛り上がり。それはダンスがすごいから。アクロバットをの人も体操をやっていた人のような体型で、次々に身軽な技を決めている。基本的に女の子が憧れるような、かわいい振り付けのダンス(振り付けは、振付稼業air:manがやっているらしい)なんだけど、そこに曲芸が入ってサーカスのような趣になっている。もっとサンリオのキャラクターに見合うゆったりした感じなのかと思ったら、パレードは一気にテンションが上がる感じだった。前に東京ディズニーランドのパレードも観たけれど、全体にみなぎる気合いの入れようとプロの魂は断然こっちの方が上だなあと思った。(ディズニーランドのが気合いの入っていない回とか場所だったのかもしれないけど)
 やはり人前に出て芸をするというのは、これくらい真剣に自分の技術を高めて、自分と向き合って堂々とやるべきことなんだと思う。
 
 さて、このような雰囲気に弱いのがうちの娘である。わー!と盛り上がる前に、引いてしまうことがあるのだ。辺りが暗くなったときに、横にいた娘は僕の膝に座り替えていた。僕自身はこんな素晴らしいショーを娘と観られて、それだけで気持ちが盛り上がっているんだけど、娘の方はもしかしたらトイレに行くと言ったり、帰ると言いだすかもしれないなと思っていた。
 それが、キャラクターが出た時には「キティちゃんだ!」「おとうしゃん、マイメロちゃんいるよ!」などと盛り上がり始めた。
 ショーのMCのお姉さんが、「今日は特別な人をお迎えします!」と言った。それでキラキラの馬車に乗って登場したのが「キティちゃんのお父さんと、お母さんです!」とか言われた時には、なんじゃそりゃーとずっこけたが、やはり娘は喜んでいた。
 
 そしてパレードの最後、お姉さんが「みんな、一緒に踊りましょう!」と声をかけると、周りの子どもたちがわらわらと集まってロープを越え、ステージに歩み寄っていった。こういう展開がうちの娘は最も苦手なのだ。
 そういえば僕も子どもの頃、ヒーローショーとかで敵の戦闘員が「子どもをさらってこい!」「イー!」とか言って客席に降りてきたとき、どうか自分の方には来ないでくれと必死に念じていたものだったなあと思う。
 しかし、娘は自分から「行く」と言いだした。これには僕の方が狼狽してしまって、「え!?行くの?お父さん一緒に行けないよ?」などと言ってしまった。しかし、娘は前に座っている人をぐんぐん通り越して、ロープも越えてお姉さんのところにたどりつき、可愛いポーズを控えめにとっていた。それを見て連れ合いは感涙…。父はプリクラのすだれさえ越えられないのに…

 メルヘンのパワーはすごい。娘の内弁慶な性質くらいは吹っ飛ばしてくれる雰囲気と勢いがある。
 満足げに帰ってきた娘。いつも家にいる時くらい自己中では困るけれど、いざという時には物怖じしない子になってほしいので、本当に連れてきて良かった。
 

 男親でも、できる限りは子どもと同じものを見て楽しめたらいいと思っている。
 たとえば僕の中学生のころには「セーラームーン」が爆発的に流行ったけれど、観る気がしなかった。さかのぼって小学館の雑誌『小学〜年生』を読んでいた時も、本誌には「はーいまりちゃん」や「スイートらぶらぶ」などの少女漫画が載っていたけれど、飛ばしていた。そういうのを読むことが恥ずかしいとかカッコ悪いと思っていたのではなく、単純に興味がなかったのである。
 けれど、女子の世界はすごいなと、いまこの年になって思っている。
 本来、僕自身はマイメロに別に興味はなく、最初見たときは「なんだこのブルーナのうさぎのニセモノみたいなのは。ミッフィーにほっかむりをかぶせて、なにがマイメロディちゃんだ!」と思っていた。しかし、娘が「かわいいー!」と言って騒いでいるのを見ていたら、良いもののような気がしてきて、しまいには僕もtwitterでマイメロをフォローしたり、サンリオ総選挙で「やばい、シナモンに負ける!」とか言って毎日投票したりという体たらくである。
 また、同じく女子の世界であるプリキュアも、毎週一緒に楽しんで観ているうちに話が楽しみになり、娘は気乗りがしなくてその日の放送を観ようとしなくても、録画を「早く観ようよ!」と言ったりするくらいである。
 
 うーむ、まずい。今まで全く自分の中に無かったものに目覚めるのは怖いような…。
 しかし、今やっているプリキュアなどは悪の手下になった幼馴染を元に戻すために、赤い鏡の中から出てきたラスボスのところに攻め込んでいくという展開になっており、なんか娘がいなくてもこれだったら来週が楽しみのような……まずい。
 よし、こういう時は自分の中の男らしい気持ちを思い出すためにも、メタルだー。amazonでメタルのCDでも買うか!

 あ、Blind Guardianが新譜を出すの?買わないと!ハンズィ・キアシュ(ドイツ人)の野太い声は女子と正反対にあるものだし。
 ……って、
 

 おい、ハンズィ!お前ぜったいプリキュアにハマってるだろ!

2015年1月1日木曜日

コミックマーケット87への参加で考えたこと  

 もう日付が変わって新しい年になってしまいましたが、寒い中コミックマーケットに来てくださった方には本当にありがとうございました。また当日お会いできなくても、CDの発表前、僕があまりにネガティブなので心配してくださっていた方もありがとうございました。

 きっと当日にはさすがに覚悟が決まるものかといえばそんなことなかった。前日に搬入を済ませてあとは行くだけになっていたのに全く寝られず、20分くらい寝たのか寝てないのか分からないまま家を出た。
 前日、連れ合いにこぼした我ながら一番ヒドイ言葉は「もうCD2枚しか売れてなくていいから明日の夕方にワープしてほしい…」であった。

 電車に乗ったものの、満員電車の中で明らかにコミケ客の大学生がデカイ声で話しており、「萌え豚のやつらがどうのこうの」とか悪口を言っているのを聞いていたら嫌になってきた。話の内容からするとどうも、カワイイ女の子キャラクターが出てくる場面だけを好むようなアニメ・ゲームファンの蔑称のようだ。
 それは「三つ目がとおる」で言ったら、写楽くんや謎解きはどうでもよくて、和登さんの服がびりびり破けるところだけを目当てにしているファンのことだろうか。…などと考えていたらどうでもよくなってきた。

 そういえばマノウォーは「これはメタルじゃねえだろ」という音楽に対してフォールス・メタルという概念を作っていたし、LAメタルの華やかなメンバーは「ポーザー」(格好だけ)とも呼ばれていたっけ。精神性のない音だけのパンクについて「ファッションパンク」とかね。そういうものかね。今のご時世に「あいつはポーザーだ」とか言ってたらバカみたいだよね。今度から、「どうも、フォールス・メタルのパラメキア帝国です」って挨拶しようかな。言ったら吹きそうになるけど。
 
 まあ、そんな風に考えていたらすぐ会場に着いた。8時に着いてサークル入場口から入り、すぐ出展の準備に入った。長机の半分のスペースを使って売り場にして良いことになっている。
 今回は本当に新人バンドが体当たりするつもりで、初心に帰ってお客さんを増やせるよう頑張ろうと思っていた。だからポスターを含めたスペースのレイアウトは全部事前に決め、売り子をする僕とボブも名札を作って、一緒に閉会の4時まで声を出して頑張ろうと話した。
 これが当日のスペースの様子。手前のipadからは格ゲーメドレーのPVがループ再生されるようにした。
 



 さあ開場というときに、目の前の艦これ吹奏楽サークルにすごく肌を露出したコスプレをしたお姉さんが売り子として来ていた。……もうダメだ。
 「艦これ・吹奏楽・お姉さん」それの向かい側に、「ファミコン・メタル・猫背」だよ。もうCDをダンボールに戻して、ゆうパックで自宅に戻す準備をした方がいいんじゃないのか。

 しかし、開場してお客が来たらそのお姉さんは大きな声で宣伝をして頑張っていた。
 そうだ、僕らは聴いてくれる人を増やしにココに来たのだ。ここで声も出さずに突っ立っていたら音楽以前に、全ての面で僕らダメになるぞと思った。

「ゲーム音楽バンドですー。ファミコンとかスーファミやってます。聴いてってください!」と、開場の10時から16時まで通る人に呼びかけ続けた。
 通りがかる人の顔を見て今自分が声を出しているというのは、バンドの音楽を聴いてもらうために精一杯の努力をするという点で、せっせとウェブ上で宣伝ページを作ったり、どうしたらいいのか考えたりするよりも何倍も清々しい行動だった。楽器の練習とは別の意味で、自分の中身が清められていくような思いだった。僕はおにぎり2つを食べて、ボブはカロリーメイトを食べて、その間以外は8時間呼びかけをし続けて、僕らのバンドはたぶん一段階レベルが上がったんじゃないかとさえ思える。
 
 視聴をして「おおおー!いいね!」と言ってくれる人。
 PVに目を止めて、面白いことやってますねDVDは無いの?と言う人。
 CDを手に取ってくれて、「既刊はないの?」という人。
 視聴する前にもう買ってくれて、家での楽しみが無くなるからねーという人。
 一曲目のすごく静かな曲を聴いて「いいね」と言って買ってくれて、僕が心配になって「あの、他の曲はすごくうるさいんですけど大丈夫ですか」と聞くと、「そうなの?全然。そういうの好きだからOK」という人。
 そして、明らかに子どもだろうというお客が三人「マッピーは入ってますか」と聞いてきたのは驚いた。300円かー、どうしようかなー、よし、買っていこう、ください!と言われた。年を聞いたら13歳だって…。お父さんに渡してあげたら喜ぶかも。試聴をして気に入ってくれたのかもしれないけど、明らかに子ども用みたいな小さな財布から300円が出てきた光景は目に焼き付いている。
  
 バンドを再始動する際には、以前CDを聴いてくれていた人やライブに来てくれていた人にはほとんど挨拶をせず、というか「またやりますから応援してね」というのがどうもエラソーでできなかった。余計なお世話というのもあるし、勝手にバンドを中断しておいて何だよというのもある。
 しかし、当日の会場には僕らのスペース前を偶然通りかかって、「復活してたのー!?」と驚いてくれた人が何人もいた。カタログで目にしたわけでも、twitterやホームページで見たわけでもなく、その日に知ったのだという。中にはパラメキア帝国を観に来て、自分もバンドを始めた!と言ってくれる方も。(こんなフォールス・メタルバンドを…。)
 そして、すごく応援してくれていた人に10年ぶりに再開して、本当に喜んでくれて、握手をしたらなんか目がウルウルしてしまった…。
 10年休んだ分、それを取り返せるくらい頑張っていこうと思った。というか、早く帰って練習したくなった。
 
 その日は結局、僕らの1枚目のアルバムと2枚目のアルバムの間くらいの枚数のCDを手に取ってもらうことができた。
 年の瀬で、僕らのような年代は参加しづらくなっている日程、しかも以前のようにFFやFalcomのアレンジやメタルアレンジが流行っているわけでもなく…という状況でそれだけの数の人に聴いてもらえるというのはとても嬉しいし、驚きでもあった。

 こういう活動はやはり続けていかないと意味がないし、今回無理をしてCDを出せました…というのではダメで、また出せる体制を整備しなければならないと思う。今回のCD制作についての反省も忘れずにしないと。
 
 というわけで、CDを聴いてくださった方でお時間の許す方はぜひアンケートにご協力ください。項目の全てに答えなくても、答えやすい項目だけでも大丈夫なようにしてありますので。悪い点は超真剣に受け止めて次に生かし、良い点を書いてもらったら、側で見ていたら気味悪がられるくらい喜びます。よろしくお願いします。

https://docs.google.com/forms/d/12q72hCVrZ671Vw5T6Vfx6clZxGpMxq5S6b0LKZ14fnI/viewform?usp=send_form

 コミケ会場を片付けたらこんな感じ。祭りの後というか…

 だけど、どんなに頑張っても燃え尽き感は味わったことがないので、もう次のアルバムに何を入れようか考えています。というか、3曲決まりました。よし、やるぞ!