2015年5月31日日曜日

ゲー音部vsパラメキア帝国にご来場ありがとうございました。

 家に帰ってブログを書くまでがライブだからねとメンバーに言われていたにもかかわらず、1週間も遅れてしまいました。
 改めてゲー音部のみなさん、当日来場してくださった皆さん、ありがとうございました。

 今回はドラムとベースがいない3人の編成とはいえ、このバンドにとっては10年ぶりのライブということになる。来ているお客さんの目当てはゲー音部の演奏なので、僕らにそこで何ができるかと言ったら、中途半端になったりせずに、このバンドらしい音を出すことだ。

 実は、以前「ゲーム音楽のメタルアレンジバンド」と呼ばれるのが嫌だった時期がある。
「メタルアレンジ」って、常にツーバスが鳴っていて原曲を倍のテンポにしてあったり、ギターのバッキングがパワーコードとルートの刻みだけ、さらに頻繁にメタルの有名バンドの「引用」が入るというイメージがあった。つまり、ANIMETALの手法である。
 特に大げさな言い方ではないと思う。だって巷にあふれる「メタルアレンジ」と言われるものの大半がそうだったんだから。

 それが悪いというのではない。だって僕もANIMETALはすごく楽しんで聴いたし、メンバーも他のバンドをやっていた頃から大好きなアーティストだ。
 ただ僕は、メタルというのはディストーションギターとツーバスではなく、各自の楽器を「ギリギリまで無理して弾く精神」と、「俺の生き様はこれしかねぇ」という暑苦しさだと思っている。だから、昔はメタルと言われて、聴く前から「こういうやつでしょ」と判断されるのが嫌だった。しかし今は、どう聴かれるか、どう受け取られるかでオタオタしていたら、そんなバンドはダメだと思う。
 そんなわけで今回は変化球ではなく直球で、うちのバンドはこうですよという選曲とアレンジにした。


 当日の朝は9時半に川口の市民ホールフレンディアに着き、ゲー音部首魁の麺さんにあいさつをしたあと、駐車場と会場を機材運びのためにボブと2人で4往復した。モニタースピーカーとスタンド、ミキサー、パソコン、てまりんが弾くキーボードやそのスタンド、マイクスタンド、自分の楽器とエフェクター、ケーブルたくさん、売り物のCDなどなど、とにかく荷物が多かったのだ。

 そうこうしていると、あっという間に開場時刻になってしまった。ゲー音部の皆さんが音出しやリハをやるのかなと思ったら、そんな時間は無さそうであった。
 間借りしている僕らがリハをバッチリやらせてもらうわけにもいかなく、その場で一応音が出るかだけを確認した。ちょっとしか曲をやらないわけだし、本番でやる曲を今やってもなぁ…と思い、適当にTo Make the End of Battleをボブと合わせていたら、どこからかキーボードで合いの手を入れる音が…。
 さば夫さんだー!

 しかもキーボードでなくてピアニカみたいなやつだ!カッコいい!うちは夫婦でさば夫さんファンなのでとても嬉しかった。他にもその場でサイバーコア(PCエンジンの昆虫シューティング)の1面の曲を弾いてもらえたりして、ああ、ゲー音部とのライブなんだ!という気持ちが高まってきたのであった。

 当日はゲー音部の第1部 → 第2部 → パラメキア帝国 → ゲー音部vsパラメキア帝国 という流れになった。すごく良い時間に配置してもらえて、間借りの分際でとても恐れ多い。

 ギタリストのろみさんや、トランペットの方が持参したステッカーをすぐさま楽器に貼ってくれていて、とてもうれしかった。
 

 このステッカーは職場に絵が上手な人がいて、ちょっと頼んだらこんなに素敵なものを描いてくれたのだ。「ファミコンですか……おばあちゃんちにありました」というくらい若い人なので、パッケージとか画面の絵を見てもらって、「これらのキャラクターが集まって、めいめい楽器を持って演奏してる感じでお願いします!」と言って描いてもらった。
 (12時の位置から時計回りに中島&弓子、チェルノブ、ミロン、魔人、ウパ、サンドラ、せんせい、ハーゴン。中央はヘッケル・ジャッケル)


 さて、11:30にゲー音部の第1部が始まると、その場リクエストに応えるレパートリーの多さ・柔軟さとお客さんを引き込む盛り上がりであっという間にゲー音部の雰囲気が出来上がっていた。
 ゲー音部の演奏は、その場で合わせた曲であっても破綻することがない。参加している人は場によって違うし、その日に偶然誰の音が大きかったとしても「ゲー音部の音」になっている。それは、参加しているみんなが「好きなゲームの音楽を合奏する」という楽しみに満ち溢れていて、その思いが一致しているからこそ。参加者がお互いを信じている音になっている。それはこのサークルの一番の魅力なんじゃないかと思う。

 
 僕らの出番は意外と早くやってきた。ふつう対バンのライブに出ていると、一緒にライブをやるバンドに別に興味はなく、早く俺らの番来ないかなー、とか思っているけれど、どんな曲がリクエストされるのか、どんな音になるのかと楽しんでゲー音部を聴いているとすぐ時間が過ぎてしまっていた。

 自分のギターをつなげると、やはり緊張してきた。まあ僕が緊張しやすい体質というのもあるけれど、この感覚はマズイと思った。指がバタバタ勝手に動くし、出番前に自然と曲の一番難しい部分をテンポをずっと早めて弾く…みたいな悪い癖が出てきた。
 緊張した時に自分がどうなるか、というのは今回いろいろ想定していた。たとえば指に汗をかくときは、指に弦潤滑剤を吹くようにした。そして、指がバタバタせわしなく動くときは、ヘッドホンで1曲目のテンポを聴いて心を落ち着けるのだ。考えたりメンタルトレーニングの本を読んだりした甲斐があり、どうやら1曲目はおだやかな気持ちで弾けそうだった。

 そうこうしていると、てまりんが会場に着いた。
 実は今回、メンバーが全員そろった状態で曲を合わせるのは、本番が最初である。
 というのは、うちに子どもが二人いて、二人ともスタジオで大きな音を聴かせるわけにはいかないし、特に長女の方は積極的にジャマしにかかってくるので、一度も三人でスタジオに入れていないのである。
 家の近く(車で20分ほど)のスタジオを借りて、そこにまずボブとてまりんが行って合わせ、僕が家で子守りをする。そして、てまりんだけスタジオを出てきて家にもどり、僕とバトンタッチして、次は僕とボブが合わせる…そんな方法で練習をしてきた。(本番のこの日だけは僕の母に子ども二人を見てもらった)
 
 見ると、てまりんはゲー音部の方にキーボードの前にマイクスタンドをセッティングしてもらっている。
 あれれ?マイクは僕がMCに使うことになっていて、しかも僕とボブの間にキーボードが配置されるはずではなかったの?
 2曲目のファイヤーエムブレムはキーボードなしで、歌のみになるはずなのに…
 そう思って、てまりんに聞いてみると「え?こうするんだよ、言わなかった?」みたいなことを言われた。本番前に初めて知った。
 キーボードの音を出してもらうと、明らかに音が大きすぎる。なんだこれ…ギターと合わせても、ものすごくキーボードが大きい。
 ミキサーの方で下げてもらって、ようやく曲を始められるようになった。大丈夫なのか…


 ダメだった…。
 1曲目はFirst Step Towards Wars。自分の音が小さすぎて聞こえない。
 終わった…。
 一体僕はなんのために練習してきたんだ。お客さんも何の曲やってるか分からないよ。
 たぶん間違えずに弾ききったけど、そういう問題じゃない。自分の音が聞こえないんだから。

 一曲目の終わった瞬間に、ボブに「ぜんぜん聞こえない。僕の音上げていい?」と聞いた。ボブもおかしいおかしいと言っている。全然リードギター上がらないよ…とか言って。
 もうだめだ…。お客さんに謝って帰った方がいいんじゃないの?メタル界隈では本当に謝って帰った人とかカレーが辛いからライブを飛ばした人がいるぞ…と思っていたらボブに、とりあえず色々見てみるから、MCで場をつなぐように言われた。

 一所懸命練習してきた曲がむちゃくちゃなことになり、頭が真っ白な状態でMC……
 もう何をしゃべったか全然覚えていない。たしか、昔話をしたような気がする。
 そんな時に後ろからボブの「あー、リードギターとバッキングのギター、チャンネル間違えてた!」という声が聞こえた。つまり、伴奏の方がでかく、メロディが小さいまま1曲目を終えてしまったということだ。
 
 今回は音響面はボブに任せていて、何も口出ししてこなかった。僕はぜったい練習をしている時間を確保しなきゃいけないから、トラック作りから音量バランスまで全部ボブがやってくれたのだ。
 チャンネルを間違えていたと聞いて、一瞬「こいつライブ終わったらモヒカンにしてやる」と思ったけど、ここまでずっと頑張ってきて、ライブの本番でテンパってトンチンカンなことをしたとしても、そんなに責められないなと思った。
 
 自分の音が出ると思って安心して迎えた2曲めはファイヤーエムブレムのメインテーマ(ボーカルバージョン)。イントロを聴いて思った。ギターがでかい!
 というか、僕は歌が入るのを初めて聞くのだ。ボブは歌と一緒に合わせていたけど、どうなんだ、大丈夫なのかマイクの音量は…。
 
 ダメだった…。
 ぜんぜん歌が聞こえない。
 …終わった。
 そりゃそうだよ、マイクの音量が小さかったらこんなにギター二本の音量がでかくて、歌なんて聞こえるはずないよ。やっぱりボブはライブ終わったらモヒカンになれ。それに、てまりんも何でわざわざ弾き語りにするんだよ。よけい歌が聞こえないよ!ライブ終わったらワカメちゃんカットになれ。帰りにその足で床屋さんに行け。
 
 このまま音がめっちゃくちゃなまま終わるのか、なんのために練習や編曲してきたんだ…。僕はミキサーの何をどこに入れているか分からないから、曲を流したまま音量を変えるわけにいかないし!
 そう思っていたら、うちのミキサーに、すすーと手が伸びて……なんと歌が聞こえるように、キーボードが適切な音量に…
 さば夫さんだー!

 マジ救世主。本当に助かりました。その後の曲でも音のバランスがめちゃくちゃなのを度々直してもらってしまいました。

 まあその後も、3曲目のビッグブリッヂの死闘の最初のAメロでよくドラムが聞こえずに身失ったり、四魔貴族バトル2のキメの部分で誰か間違えて一瞬めっちゃくちゃになったというのはあったけど、それ以外は無事に進んでいった。(これはドラムが打ち込みで、あまりよくスネアが抜けなかったので、拍が表なのか裏なのか分からなくて途中復活が難しかったのもある。グラディウスで面の途中で死ぬようなものだ。)

 何しろ今回は緊張が一番の敵で、上がった自分を想定するために、家に自転車で急いで帰って心拍数だけ上がったまま、指の方はウォーミングアップもしないまま曲に合わせて弾いたり、変な練習を重ねただけあって本番はそれほど緊張せずに弾くことができたと思う。
 想定外にヒドかったのは、曲間のMCである。もう何をしゃべったのか、うわのそら過ぎてほとんど忘れたが、確かひどいことをたくさん言ったような気がする。
 
 最後はマトーヤの洞窟でしめた。以前に活動していたときもラストはこの曲という感じで定番になっていた。MCでは手拍子を求めたくせに、途中で拍子が変わり、もとの拍子に戻ってまた手拍子ができるかなと思ったら変拍子が一瞬入ったりと、意地悪この上ない編曲だ。なんだかこの曲をやったら、やっとパラメキア帝国としてライブができた気持ちになった。


 僕らのライブが終わり、その日一番楽しみにしていた共演の部に移った。
 ゲー音部とパラメキアからインスト1曲、歌もの1曲ずつを出し合って、計4曲を合わせる手はずになっていた。

 まずはゲー音部が「アトランチスの謎」をやって、それから合同曲をやることになった。麺さんが「その方が乱入っぽいでしょう」と言い、僕も確かにそうだと思って一曲は横で聴いていた。聴きながらどうやってカッコよく乱入するかなと考えていると…
 ボブがゲー音部にまざって楽しそうにアトランチスの謎を弾いている……おどれそれじゃ乱入にならんじゃろうがー!わりゃシゴウしたるぞ!(はだしの弁)
 
 
 その頃には緊張も解けていたので、ゲー音部の曲を楽しみに、できるだけたくさんの曲をリクエストしたいお客さんをしり目に、好きなことをしゃべってしまった。
 やったインスト曲はMADARAとFF2のバトル2。僕はこんなに多くの人の中で演奏するの自体初めてで、その日一番気持ちよく弾けたように思う。ひとのドラムって最高!メイジソさんのパーカッションとchihiroさんの指ドラムが噛み合っていて、お客さんもすごくのっていたと思う。
 歌ものはMotherのBein' Friendsと、迷宮組曲のボーカルバージョン(麺さん編曲)。てまりんが真ん中で歌っていたので初めて表情が見えた。緊張しているのかなと思ったけれど、本番前に声出しが全くできず、思うように歌えなかったようだ。
 そういえばいつもは歌う前に、周りがびびるくらい大きな声を出して準備をするのに、なんで…と思ったら、遅れて行って(ぎりぎりまで子どもを見ていたため)、ゲー音部のステージも全く見ていなく、どういう雰囲気か分からず声出しをするのを遠慮したようだ。
 (かわいそうなので、今度ゲー音部のふつうの活動に遊びに行ってもらおうと思う。声も思い切り出せるし、鍵盤も僕と違って練習しないでもどんどん弾けるのでアンサンブルの役に立つと思う)

 うちのバンドが去った後にはゲー音部の看板ともいえるソルスティスやレイフォースなどの楽曲を挟み、Duddy Mulkで大盛況の幕を閉じた。僕らのバンドにとっては、復帰の第一歩となり、また微力ながらも楽しいイベントを共催でき、大きな前進となる1日だった。
 

 打ち上げを経て家に帰り着き、なんとなくファイナルファンタジーI・II全曲集を聴いてみた。
 あのころ、街の外に出てザコ敵と戦うだけでものすごくワクワクしたし、雪原の洞窟でヨーゼフが死んだ次の日は学校でもさわぐ気になれなかった。体験と音楽が密接に結びついていた人間にしかできない編曲や、出せない音があるんじゃないかと思う。それを追求する仲間がいるのって、すごく幸せなことだ。
 

2015年3月21日土曜日

親の夢を子に託してみた…

 慎重な性格で得をすることって、世の中にあまり無い気がする。
 他の人が特に考えもせずにやっていることを、あーでもないこーでもないとじっくり考えたりすると時間のムダだ。それは分かっているのだが、何かを話すにも「こう言った方が伝わるかもしれない」とか考えてしまう。家に帰ってきてから「あの場面ではこういう表現をしておいた方が誰も嫌な思いをしなかったかも…」などと一人反省会が始まってしまうこともある。

 自分の娘には、そういった部分で物怖じしたりクヨクヨ考えたりする性格にはなってほしくないと思っている。別に話なんて深まらなくてもいいから、騒いだり、その場のノリで明るく楽しくやれる女の子になってほしい!

 そこで、娘と二人でトレーニングをすることにした。自宅のHDRにいつの間にか録画されていた「BSハイビジョン世界の美しい街」とか、そういう深夜にやっている、ナレーションも何もなく淡々と風景を映しているだけの番組を見て、「ただ騒ぐ」ということを娘と二人してやってみたのである。

 どーでもいい音楽に載せて、ただベネチアの街の静かな様子を流している番組に、親子二人してツッコミや合いの手を入れたり、バカ騒ぎをするのである。
僕「よっ!待ってました!本場イタリアのチョイ悪おやじ!セニョール!ジローラモ!」
娘「これは、川ですねぇ。川で……おふねにのるのかい!」
娘「またおふねだ!アンコール!アンコール!」
僕・娘「ちゃっ、ちゃちゃっ、ふー!」

 連れ合いには「何をやってるんだ…」と呆れられたが、あなたには分からないだろう。セニョールがスペイン語なんじゃないかという不安にもかかわらず、そこを慎重にならず口に出すほどの決意を秘めた私の心の内が。
娘にだけは私のような人生を歩ませてはならぬという親心から早期教育に乗り出したのだ。ここで気後れしてはならぬ。数年後、美しく成長し、たくさんの友達に囲まれた娘が感謝する姿が目に浮かぶ。

 さて、娘の「ごっこ遊び」では、そういった瞬時のコミュニケーション(なんにも考えずその場のノリで言葉を生み出す)能力が試される場である。父親としてしっかりと応えてあげなければいけない…
 だが、男の子のヒーローごっこ遊びと、女の子のプリキュアごっこは似て非なるものだ。具体的に言うと言語体系やシナリオが違う。
男の子であれば、「○○ビーム!」「うわぁぁぁ!」「××がえし!」「なんだと!○○ビームがきかない…」「ふはは、めいどのみやげにおしえてやろう!わしのじゃくてんは…」とか、まあ、そんな感じでやってればいいのである。

 しかし、プリキュアの場合は「きゃあー」とか言ってやられて、変身が解けたりなんかして、その後いろいろ苦しそうに独り言をしながら、「いままでの私たちはあきらめてたかもしれない。……でも、いつも前を見て、けっしてくじけないの!」とか何とか言って、とにかく心の持ちようだけでいきなり強くなったりするのである。
そこが実に難しい。

 また、男親にとって最大の関門となるのは、女の子の「ステキパーティーごっこ」である。「わたし、マカロンを持ってきたの」「わーカワイイ」とかそういうやつ。
無理。


 娘「アナ雪ごっこしよう!わたしがエルサ、おとうしゃんはアナね」
 父(……)
 娘「どうしたの?はやくはじめてよ!」
 父(……どうしたらいいんだ!)「あのー、わたし、この今日初めて会った人と結婚しようと思うのですが、どう思います?」(アナ雪を真面目に観ていないからセリフもよくわからない)
 娘「けっこんはみとめません」
 父「あ、そうですか…常識的に考えたらそうですよね。(娘)ちゃんも変な男といきなり結婚とか言わない方がいいよ。みんなが悲しむことになるからね…」
 娘「ちゃんとやって(怒)!」

 アナ雪って何がどのように女の子の心に引っかかってくるのか、まだ理解できていない。何度もDVDが家で再生されているにもかかわらず、女子の魂を持たぬ父親にはセリフどころか歌さえも頭に入ってこない。風呂で娘が主題歌をうたいだしたので一緒に歌っていたら
 「とまーどいー傷ーつきー、だれにもー知られぬーようにー♪」
と言って、「だれにも打ち明けずに、だよ」と間違いを指摘された。確かにこれではヒサヤ大黒堂であると気づいた。

 いくらツッコミや合いの手のトレーニングをしようが、ごっこ遊びに参加しようが、30代も後半にもなれば僕自身の考え方や姿勢は改まらない。
 それじゃあできることは、娘の観るテレビや映画をきちんと一緒に観て、そしてセリフや状況を覚えて、色んなパターンに対応できるだけの貯えをしよう…ごっこ遊びに誘われたら、覚えたことを使えばいいのだ、と気づいた。楽器にたとえると、アドリブの苦手な人がたくさんのフレーズを覚えて、引き出しからひとつずつ出して順番に使っていくように…。


 プリキュアでは、「愛など無意味」とか言っているイケメンのラスボスが、「それでも愛の力は無敵だよ」と言い続ける主人公にいきなり抱きつき、「では、オレを愛してみろー!」とのたまうメチャクチャな展開があった。
 それを観た後、悪ノリをして「では、オレを愛してみろ―」と娘をだっこしてみた。
 娘は爆笑して「がぶー!」と言いながら、僕の肩を噛んだ……。

 もう、プリキュアがどうとかじゃないんだ。役作りとか、セリフ回しとか大切じゃないんだ。その場が面白ければそれでいいんだよね。慎重派は、ノリの良い人間には一生勝てないと悟った。
 ただ、娘が後者になりつつあるのを喜べばいいのだ。

 
 娘が順調に育っているのを再確認したできごとがあった。
 先週のことである。娘の通う保育園で卒園式があった。三歳児は基本的に参加しなくて良いのだが、「どうしても行きたい」と言うので一緒に行った。

 娘の担任の先生にあいさつすると、「あ、(娘)ちゃん……おはよう。あの、お父さん、もし飽きちゃったら2階の方に…」
 なにそれ?うちの娘がいると雰囲気ぶち壊しってこと?
 しかも会った瞬間の「来たのか…」っていう苦笑いは、なに?…と一瞬思ったが、担任の先生やクラスの子たちには普段からうちのエキセントリックな娘がさんざんメーワクをかけているだろうから、仕方ないか。

 式が始まり、園児が竹馬に乗って入場してきた。日本古来の遊びを押す保育園の方針なのだ。
 一人ひとりを見ていたら竹馬の高さが違って、「いちばん高い竹馬は私のよ!」とかそういう、せめぎ合いがあったのだろうなーとか、どうしても怖がる子が一歩を踏み出せた瞬間ってやっぱり感動的だったんだろうなとか、色々考えてしまった。 
 それよりも、自分の娘が3年後にブレザーを着て竹馬に乗っているところを想像したら涙が……
 そんな親の思いはさておき娘はマイペースで、あれは誰のお姉ちゃんだとか、小学生になっても遊びに来るらしいとか僕に説明を始めた。

 卒園証書の授与が始まった。
 園長先生が感動しているのか花粉症なのか、人前で字を読むのが苦手なのか分からないが、たどたどしく証書の文を読む。

「○○さま、あなたは6年の保育を無事終了し、丈夫な体、豊かな心、考える力を養いました。平成26年3月15日○○保育園、園長○○」わーという拍手、カメラのフラッシュが光る中で、園児が証書をもらう。いいものだ。
 続いて二人目。「△△さま、あなたは6年4か月の保育を無事終了し…」
 ああ、保育園は子どもによって預けられる時期が違うから、保育の期間が変わってくる。だから文面が一人ひとり違うのね…。
 そう思って、目の前で証書をもらう子は生後半年くらいで保育園に来たんだなーとか想像していたら、また涙が…。よその子なのに。
 園長先生はその後も証書の文を読み続けた。「丈夫な体、豊かな心…」ああ、園児が12人くらいしかいないから、「以下同文」にしないんだな。一人ひとりを大切にするからこそ、省略はふさわしくないのだ…。と、そう思った時であった。
 あろうことか、うちの娘は感きわまる保護者たちの後ろでこう言い放ったのだ。
 「ぜんぶ読むのかい!」

 娘をかかえ、別の涙を流しながら大急ぎで式場を出た。
 娘よ、違うんだ。それは色々違う。
 とんでもない怪物を育ててしまうのではないかと不安に思えてきた。

2015年3月1日日曜日

久々にスタジオ練習してきた。

一ヶ月ブログの更新を休んでしまったが、ライブでやる曲の編曲にずいぶん時間がかかった。全部新曲をやるというわけじゃないのにどうしてこうなったのかというと、練習をちょっとずつでも並行してやらないと落ち着かなかったからだ。
 以前活動していた時の失敗として一番に挙げられるのが、ライブ直前まで練習以外のバンド運営上の作業ばかりやっていたこと。早く「弾ける」状態になっていないと不安で…
 順番としてはやはり、編曲をちゃんと急いで仕上げて、それから練習するのがメンバーに対しても優しかったよなーと思う。そりゃメンバーには既成の曲を先に練習してもらっておけばいいんだけど、曲がちゃんと全部決まってないと全体像がつかめなくて、バンマスだけがそれを分かっているという危険かつメーワクな状態に陥ってしまう。

 社会人になってバンドをやっているわけだから、時間の使い方を考えるのが一番大切だと思う。何をどんな順序でやって、何に注力するかはよく考えないと。(僕の仕事はそれほど忙しくないし、もっともっと子どもに手がかかる家庭だってあるから、僕自身は時間が無い方ではないと思うけど。)
 10年前から聴いてくれている人には「ゆっくりでも細々とでもいいので、活動を続けていてほしい」と言われた。バンドをしっかり続ける鍵は僕らの場合、やる気の維持とかより時間の使い方だと思う。メンバー間の不和とか音楽性の違い(?)とかも無いしね。メンバーはみんな僕が無茶なことを言い出しても聞いてくれるし、時々お菓子とかを渡しているから大丈夫だ。


 さて、今回は地元のスタジオに入ってみたのだが、あまりにも久々だったせいで行くだけでワクワクしてしまった。実は活動を休止していた間も、妖星乱舞を一曲合わせるためだけにメンバーとスタジオに入ったりはしていたんだけど、ライブをするという目的では本当に10年ぶりのことになる。

 店内はバンドのレコ発やライブ告知のポスターがべったべたに貼られていた。
 メンバー募集とか楽器の講師やりますとかを眺めていると懐かしい気持ちになり、自販機に入っている7UPとかを見ても、ああスタジオだなぁという気がしてしまう。気分に合わせてコーラを買おうかなと思ったが、どうせ飲みきれないからやめた。
 受付に行くと店主がいないらしく、そこにいたバンドの人が「もう帰ってくるからちょっと待っててください」と言われた。この店と客とのナアナアな関係も懐かしい。
 待合室に座っていると革ジャンを来た人が機材をゴロゴロ転がしながら入ってきて、「おはようございます」とか言っている。昼過ぎなのに。
 おはようございますってことは、今起きたってことでしょう。君たちは寝てないことをアピールするのが半分仕事みたいなものなのに、いま起きたのかね!…と心の中で説教をしてみた。

 「⚪︎⚪︎(バンド名らしい)の××さん、ベースマガジンに載ったらしいっすよ」「ふーん…」
という会話が聞こえてくる。そりゃベースマガジンに載ったらうらやましいのに違いないんだろうが、ウソーマジースゲー!とは言えない。興味ないですよと聞き流さなきゃいけないのがアマチュアバンドマンというものだと思う。

 
 今回スタジオに入ったのはリハーサルの意味ではなく、音作りのためである。今度のライブはPAの設備がある場所ではなく、音量も限られてくるので、大型アンプを持ち込むわけにはいかない。録音では30年前の真空管のアンプを使っており、今後もそれでやることにしている。けれど、アンプは今までもライブハウスにあるものを使っていたので、同じようなものと考えるようにした。そこにこだわっているとライブ自体できないし。
 それと、デジタルのアンプを使っても、そこに必要以上にコンプや空間系のエフェクターがかかっていなければズルをしている気にはならない。そこに関しては、今日たくさん音を出したけれども、今回使うもので間違いは無いと思う。

 ライブでやる曲の中から、2曲を合わせてみた。ギターが二人、同じように歪ませてリードとバッキングを弾くので、音が埋もれたり、ひとつひとつのフレーズで何をやっているか分からない部分が無いように見ていった。
 ギターインストはリードギターが歌みたいなものなので音が小さかったら何を聴いていいのかわからなくなる。だが、思い出してみるとうちのバンドは練習で各人がさんざん爆音を出しておきながら、ライブではみんな音を小さくするので僕の音だけがでかくなった…ということがよくあった。
 ライブで自分の音が聞こえないんだったら、そのメンバーはベニヤ板の書き割りとかでいいと思う。もしくはビジーフォーのものまねで出てくる、手に棒がついた人形とかでもいい。だけど反対に音がでかすぎるのもジャイアンみたいではずかしいものだ。
 そういう意味で、音はきちんとバランスを保った状態で練習して、全員の音がそれぞれに聞こえる状態で、本番も同じようにしなきゃいけない。

 音が決まったので、少しだけ合わせの練習をしてみた。家で練習してきているので、そんなに間違えたりはしない。自分に関して言えば、子どもが寝てからこっそり練習するので、以前よりもずっと集中できている。この時間を有効に使わないと!とか、やっと楽器を触れる!という気持ちが強くて、曲を覚えるのも弾けるようになるのもずっと早くなった。
 ただ、完成度としては譜読みが終わっただけで、まだまだだと思う。たぶんこのままライブを迎えたら、ドラムに合わせて音符をなぞるだけになって、音ゲーみたいにターゲットが上から降ってきてラインに合わせて正確に音を合わせるだけの作業になってしまう。
 ボブと音を出しながら、「ここは弦がピックアップにバシバシ当たって余計な音が出るように弾いて」みたいなことをちょっと話せたけれど、少しずつそういうところを詰めていこうと思う。個人としてはもっと弾き込みが必要なのはもちろん、余裕で弾けるけど余力をグリッサンドとビブラートと倍音につぎ込んでいる感じにしていきたい。楽しくなってきた。
 練習を一所懸命していてもブログを放置しているとよくないので、たまには更新していこうと思う。当日の企みごとも色々したいし。


追伸:誰も書かないと思ってチェックすることすら忘れていたweb拍手にコメントが!ありがとうございます。
「ライナーノーツにアセルスのテーマが無いのは隠しキャラ扱いになっているのかと思いました。CDを裏返しにして再生すると出現、とか。」
今回のCD作りは自分としてはかなり余裕がある感じだったのですが、結局最後は切羽詰まって追い込み…みたいなことになってしまいました。やっぱりチェックに時間をかけることは大切ですね。アセルスのテーマ自体、アルバムのサウンドにバラエティが欲しくて、急遽「そういえばあれ、やりたかったじゃん」と録音したので、サンプルもアップしていません。ただ、けっこう演奏や編曲自体はメンバーにも気に入ってもらえたし、歌も前面に持ってくることができました。
 隠れキャラってワクワクしたものでした。ゴーデスに50連打すると涙が〜みたいな、漫画に使われたり、ガマパックンがシティコネクションの車に…みたいなのもあったりして、本当とウソとが紙一重の宝探し感があったと思います。(いま娘が見てるアナと雪の女王に隠れミッキーが…とか言われると心底どうでもいいと思うのに、自分は夢中になっていた)CDを特定の曲順で聴くと出てくるとか、プレイヤーに入れる前にスハダクラブみたいな暗号を入れるとか、いいですね。
 そういえばコミケで売っている時に、イトケンの曲が好きーという人がいて、曲を見て「バトルじゃないの…」という感じだったので、イトケンバトル分はライブで!と思っています。

2015年1月19日月曜日

CDの感想ありがとうございます。

 プリキュア観てたら、パティシエ志望の女の子(副主人公)がケーキを一所懸命作って、主人公の女の子に食べさせるシーンがあった。食べている方の主人公はちょっとガサツなタイプなので、ケーキを丼飯のようにガツガツ食べていく。
 で、パティシエ志望の子は実は自分のケーキをコンテストに出そうと思っているので「どうだった?」と感想を聞く。主人公が「え?ふつうにおいしかったけど?」と答え、「なによ!もっとマシなこと答えられないの!私のケーキのこと何も分かってない!」とかなんとか言ってケンカになるのだ。
 そうかー、いまの女の子はこういうのを見て育つのか…というか、この副主人公めんどくさい!と思っていたが、けっこうそれは他人事ではないことに気づいた。僕らも以前そうだった。今なら言えるけど、「ふつうに」おいしいと思ってもらえることって、ものすごく大事なことだ。

 正直に書くが、Twitterなどで先日作ったCDを聴いてくれた人の言葉を見るたび、おおぉー!と思って、1日に3度とか見てニヤニヤしている。もちろんメンバーにもその都度送って、な、すごいだろ!俺たち頑張ったよな。な!と言い、それを見たメンバーも、「おぉぉー!」…という具合である。
 自分のことを検索して、作ったものについて誰か言及している人がいないかなーと探すことをエゴサーチというらしいが、感想をもらえるとあまりにも嬉しいので、いつでもどこでもサーチしたくなってきてしまう。今はそんな検索している暇があったらライブの準備をした方がいいのでやらないが、たとえばライブが終わった後なんかはきっとすごく感想を探したくなることだろう。
 
 人の感想というのはそれだけ甘美なものだ。だって、宝探しのようなものでしょう。探してみたら、「ココは編曲よくないな」とか「ここミスってるよな」という意見もあるかもしれないし、それを見て落ち込むかもしれない。財宝にたどり着くまでのワナみたいなもんで。

 以前はどれだけ喜んでくれる人がいても、ダメだと言う人がいたらガックリきていた。音が悪いというのが一番多かったけど、まあそれは自分たちでもギターやドラムをマイク録りしたり、実力に見合わない音数をアレンジに入れていたりしたので、覚悟していたことだった。だって今、10年前のCDを人に聴かせられるかって言ったら、それは無理というものでしょう。あまりにも荒削りだから。
 そうじゃなくて、「パラメキア帝国はMDで録っているんだよ」とか書かれていて、MD使わねーよ!と思ったり、「これ読んだら音良くなりますよ」って、楽器屋のフリーペーパー(すごく初歩のやつ)を薦められたり、自分たちが頑張っているのとは違う次元でのクレームに気を落としていたものだった。(いま考えると別に真に受けることはないのに)
 
 今だったらもっとフラットな気分で、もし良くない点も挙げてもらったら「そうか、じゃあ次はやってみようかな」と思える気がする。
 それはなぜかというと、今回のCDに、ある程度満足のいくところまで手をかけられたからだと思う。
 もう今の出来で編曲も演奏も満足と言いたいのではない。時間をある程度長く使えたので、CDを一度聴いた瞬間に、「ああー、これを弾き直せれば!ココも!ココも!」とか、「全体をもっとバーンと前に来るすげー音にしたい!ハリウッド級の!でも、そうならない!なんでだ!」という風には思いはしない。だから心の余裕がある。
 それと、自分が大人になったというのもあるかもしれない。人の親にもなったし。
 だって、ギターの練習していたら娘(女帝)にはペグを回されたりギターケースに入られたり、ピックを取られて「どっちの手ーにー入ってるか?」とか言われて、僕が「こっち」と言って、それが合っていると「そっちはダメ!」とか怒られるんだよ。その中で、ちゃんとCD1枚作れたからけっこう僕はエライと思うよ。
 
 もうひとつ僕自身が変わったと自覚しているのは、いま自分たちのやっている音を聴いてくれる人がいるというだけで、それがすごく特別なことだと思えていること。
 コミックマーケットでは、試聴はしても買っていかなかった人も勿論いる。音が好みじゃなかったのかもしれないし、僕とボブの客引きに負けて、しょうがなく聴いたのかもしれない。だけど、本当に言葉の上だけじゃなくて、聴いてくれたことに対して「ありがとうございました」と言うことができた。バンドを再始動して、音がCDという形になって、それを聴く人がいるということ自体が嬉しいのだ。

 twitterにも、すごく丁寧に感想を書いてくれた人も、買ったよーという報告をしてくれた人もいるけれど、一言でもほんとに嬉しい。プリキュアの話に戻れば、ケーキを食べて「ふつうにおいしいよ」という感想でも、僕らには心に響いて聞こえるのだ。
 だって、僕らがいくら音楽や映画やマンガや小説に触れて、すごく感動したって作者に感想を送ったりしないでしょう。アマゾンのユーザーズレビューにすら書いたりしない。だから、感想をクレクレ言うのはおかしいし、エゴサーチしすぎるのも良くないと思っている。その中で、「聴いたんでしょ!感想お願いしますよ」みたいに強いてお願いとかしたり、「このタイミングで感想をツイートしてくださいね。文面はこちらで用意しますので」とか仕組まなくても、twitterに書いてくれる人がいるというのはありがたいことだ。

 アマチュアの音楽活動や、同人誌を書いている人の中には、お金を稼ぐつもりのない人も多いと思う。僕らのCDもそうだ。
 では、何のために活動していくかというと、それは聴いてくれる人がいて、喜んでくれる人がいるということのためであって、それはもう本当に大きな糧になっている。
 何しろ活動を再開したのだって、以前聴いてくれていた人のことや、もらったメールやお手紙、掲示板での言葉を思い出してそれをパワーにしたというのが大きい。どの曲にどんなことを言ってもらったか、ライブの時どんな曲が盛り上がったか、まだよく覚えている。
 CD1枚出しただけ…ではなくて、今後もまた活動を続けていけば、きっと喜んでくれる人も増えると思う。

 本当はこういうところにブログを書いているよりは5月のライブの練習をしたほうがいいんだけど、感想を書いてくれる人に感謝している今の気持ちをまとめておきたくて書きました。


 追伸:CDのライナーノーツにTrack4アセルスのテーマについての記述がすっぽり抜けているようです。実は以前はライナーノーツにすごい長文を載せていたんだけど、今は作ったものに対する能書きみたいなので、無しにしようと思っていました。
 でも、ボブやてまりんに「名物みたいなもんだから、書いた方がいいよ」と言われて書いたのです。それで、書いたらもう仕事を終えた気分になって誤字しかチェックしなかったという…
 誤字どころか記事自体が無いということを、指摘していただいてやっと気付きました。載せる予定だったのは以下の文章です。

track4:アセルスのテーマ(サガフロンティアより)
再びサガフロンティアから、一番好きな主人公のテーマ曲です。妖魔の君の馬車に轢かれて命を落とした主人公が半人半妖の体になって蘇り、寵姫となるはずだったのを宮殿から抜け出して、追っ手から逃れながら旅を続けるというストーリー。人間でも妖魔でもない主人公が、行方も目的も定かでない旅をしている姿が印象的でした。人といるのに孤独を感じたり、それでも生きていかなければならないと思っている人に寄り添ってくれるような曲だと思います。編曲に関しては、アコースティックな編成で、てまりんの歌を前面に出す感じにしようとやってみました。伴奏はアコースティックギター、Aメロはエレキギター、Bメロはクラシックギター、ソロはパラメキア帝国初の試みとしてボーカルが取っています。」




2015年1月10日土曜日

パラメキア帝国10年ぶりの出撃決定。ライブやります!

 ライブハウスではなく、メンバーは欠けたままだけど、10年ぶりに人前に出て演奏します。
 2015年5月24日(日) ゲームレジェンド22 (埼玉県川口市市民ホールフレンディア)
 http://www.geocities.jp/zed_gamelegend/
 にて、ゲー音部さんに場所と時間をお借りしてワンステージ出られることになりました。
 完全な形でとか、爆音を鳴らしてとか、どうせやるなら長いステージを、とか考えていると僕らの場合はいつライブができるかわからない。状況が整うまで待っていて10年間活動できなかったのだから、とにかく今できることをやりたい。
 
 場所はレトロゲームやマイナーゲームに関する活動をしているサークルの集まるイベント会場で、音量の制限もある関係でドラムやベースはテープになります。行くメンバーは僕とボブ、てまりんで、ギター二人とキーボード&ボーカルの計3人。タワーレコードとかでやっているインストアイベントのような感じを想像してもらうと近いと思います。でも、きっと楽しんでもらえるライブになるはずです。

 既に選曲は終わっており、各メンバーがアレンジ作りと練習に入っています。
 もちろんPush Start My Heartからの曲も演奏するとして、あとは旧譜の曲、そしてライブのために用意する曲をバランスよく混ぜたステージにしたいと思っています。音は大きくできなかったとしても演奏は熱く、全編にわたって指がつりそうになるほど弾き倒す、酸欠状態みたいな曲を集めたつもりです。
 「このバンドならでは」というのがどこにあるかと言ったら、それはレトロゲーム音楽への愛情をとことんストレートに表現することじゃないかなと思っています。それは自分の持っている技術内で余裕を持てるくらいとか、感情を抑えて演奏できる範囲内のものではないです。

 僕はもともとすごくステージ前に緊張するタイプで、冷静にやれたことはほとんどありません。以前もライブ前にお客さんがせっかく来てくれて、お菓子とかCDとか差し入れにもらったのに挨拶もままならず、ひたすら運指をしていたり、楽屋にこもったりしていました。ピンポンのドラゴン風間のように、一人の時間を取って孤独と向き合いコンセントレーションを高めた後に最高のパフォーマンスを発揮できればかっこいいのですが、そうならない…。だいたい、1曲目が終わった後、機関銃のようにMCでまくし立てて、バカなことを言ってから会場に雰囲気に慣れていくという感じでやっていました。

 しかし、今回は絶対そうなりたくない。もう大人だから。きっとあのころよりは精神的に成長したと思っているし、人に音を聴いてもらおうと思うより前に、硬くなる自分に勝つことが一番大事だと思う。
 そして、緊張に勝つ最大の方法は練習を積むことだと思い知った。以前はライブの企画、編曲、チケット関係、来てくれるお客さんとの連絡、CDの増産など全部自分でやって、それでも残った時間を全部使って練習すれば大丈夫だと思っていた。だけど、本当に本気になって時間を無駄にせず練習したとしても、それじゃ足りなかった。自分たちの技術に余るくらい難しい曲をやっていたのもあるし、何より万全の練習ができたという自信をステージまで持っていけなかったのが緊張の大きな原因だと思う。
  
 せっかくブログを持っているので、練習の試行錯誤もしながら記録していくつもり。全曲通しで録音してみてどこをミスしやすいのか検討してみたり、弾いている映像を録画してみるのもいいかもしれない。とにかくライブで上手に弾けるように、今から使える時間はできる限り練習に割いていく。

 
 さて、当日に発表の場となる「ゲームレジェンド」は、本当に素晴らしいイベントで、「今この時代にわざわざ」昔のゲームを…というものではなくて、昔のゲームをずっと好きでもいいんだと再確認できる場所だと思っています。この場でライブができるというのは本当に幸せなことで、バンドにとっても特別な経験です。
 また、ゲー音部さんが普通のイベントでライブをするという形態を開拓したところでもあるので、その場を借りるのに中途半端な演奏では申し訳が立たないです。そういった意味でも、今のこのバンドのベストが出せるライブを精一杯作りたいです。

2015年1月5日月曜日

サンリオピューロランドに行ってきたよ。

 娘二人の親となって、女子の領域に立ち入ることが増えてきた。最近言われるようになった「大人女子」とか「理系女子」とかいう女子ではない。れっきとした、ホンマモンの「女子」である。その世界はメルヘンであり、お姫様であり、総パステルカラーでフワフワなのである…。

 そんな女子の総本山であるところの、サンリオピューロランドに行ってきた。
 長女は最近マイメロやキティを好きになったようである。また、近所の公園にはコンクリートのちょっと高い台があるのだが、そこをステージと見立てて勝手に妙な歌をうたい踊り、「お父しゃんはお客さんね。いぇーいって言って」と要求してくる。ではサンリオのテーマパークに行ってパレードでも見たら楽しかろうと思ったのである。




 入り口にはマイメロの提灯が立っており、その前で皆が記念写真を撮っている。その奥にサンリオピューロランドの建物がそびえ立っているのである。先ほど総本山と書いたが、さしずめマイメロやキティの巨大な提灯は御神体といったところか。その神々しさはメッカのようである。ここからムスリムのするように、一歩一歩ひざまずきながら祈りを捧げて歩を進めなくてはならない気さえしてくる。気圧されている父親はよそに、長女は一気に興奮度が上がったようで、神像に向けて猛ダッシュ…。まあ、嬉しそうでよかった。




 中に入ると、これはもう女子は絶対大喜びだろうという景色が広がっていた。そもそもサンリオピューロランドはテーマパークであり、遊園地ではないので、乗り物がたくさんあるわけではない。ただこの空間にいて、ゆるい人形劇を観たり、甘いものを食べたりしてゆっくり過ごすことを目的としているのだと思う。
 入り口そばにおみやげが売っていたので、娘はそこに向かいダッシュ。そういうのは帰りに買うものだよ、と言ったのだが、マイメロのぬいぐるみを欲しいと言って譲らない。帰る時に買うのではなく、「今日はこれを持って遊ぶの!」とあまりに真剣な目で言うので、そういうものか…やはり総本山に来たら女子の言うことにあまり逆らわない方がいいという地形効果も働いたのでガチャガチャなども含め数点買ってあげた。
 
 売店の店員さんやテーマパークの従業員さん達は、一人残らず完璧に、どこから見ても「女子」であった。こういうのは年齢とか関係ない。「女子」なんだよ!なんて言ったらいいの、こういう有無を言わせない迫力。これが巷に言う「女子力」ってものか?(たぶん違う)
 三つ編み、ぱっつん前髪、どことなく残るあか抜けなさ、ギンガムチェック、長いスカート、リボン、フリル、そうしたものが全て備わっていて、なおかつこれが当たり前ですという表情でそこに立って、笑顔を振りまいて仕事をしているのである。
 メタルの世界で言ったら、


 こういう感じ。

 ところで、園内には外国人のお客もいるので、英語ができる従業員さんが多い。しかし、できない人もメルヘンな気合いでなんとかしていた。
 ジャガイモにご飯がつまってて割り箸に刺してある食べ物(なんていうか分からないけど、高速道路で売ってそうなやつ)を屋台に買いにきた外国人のおっさん、やたら店員の女の子に絡んでいて、いちいちそれは美味しいかとか聞いていた。「イッツデリーシャス!」など、超笑顔で答える店員さん。
 外国人客「What kind of sauce ?」
 店員さん「………うーん、、、」(そりゃそうだよな、どんなソースか聞かれても困るだろう。)
 しかし店員さん、ちょっと考えたあと超笑顔で屋台の下から大きなペットボトルを取り出した。
 店員さん「This sauce !」
「業務用、焼肉のたれ」
 うーむ、メルヘンだ。 

 さて、アトラクションは少ないとは言え、ディズニーランドで言ったらイッツアスモールワールドみたいな、人形がたくさんいてゆっくり船で回る乗り物みたいなのはあるので、それなりに並ぶ。キティちゃんと写真を撮るにも並ぶ。
 そういう時には娘の退屈を紛らすことを第一に考えなければならないのだけど、つい習性で周りの人に目がいってしまう。

 前にいた大学生風の青年。一人だったので、彼女に順番待ちをさせられているのか、こういう世界が好きで、一人で来ているのか、どちらだろうか…。小説を読んでいたのだが、後ろにいたのでそれが目に入ってきた。以下、その本文。
 
 ちょっと渋くて すっぱい関係
 だってジグザグ 恋はジグザグ

 なんだーこの文章ーー!?
 マジかー。
 もうこの人、絶対1人で来ている人に決定。
 
 その前にもおじさんが1人で並んでいた。なんかキョロキョロしている。前の青年の堂々とした感じに比べると落ち着かなく見える。そこにお母さんと娘が来て「ありがとうー」と言って列に入っていった。要するにお父さんが順番待ちをしていたのである。
 しかし、そのお父さん、いきなり不満をぶちまけた。
「どんだけ時間かかってんだよ!俺がここにいたら変だと思われるだろうが!」
 かわいそうに、お母さんはすごく申し訳なさそうな顔をしていた。お父さん、誰もあなたを変だと思わないよ。待ち時間が長かったのと、あまりにもこのメルヘン総本山がアウェー過ぎたせいで心細かったんだね。しかし、その娘は完全に父を無視。よし、たくましく育ってくれ。
 
 他にも常連客らしいカップルの話が聞こえてきて、それも面白かった。

 彼女:「私も、もしかしたらここで踊ってたかもしれないんだけどなー」
 彼氏:「面接受けたんだもんね」
 彼女:「そう」
 彼氏:「でもさ、ダンサーさん、みんな細いよね」
 彼女:「………(怒)、でも私も受けたときは細かったし…」
 彼氏:「じゃあさ、人形の方で受ければよかったんじゃない?」
 彼女:「………(怒)」

 この二人、大丈夫なのか!?
 
 なんだかそこにいる人間ばかり気になってしまったが、僕自身もその場を楽しんで、十分にメルヘンな気持ちになっていた。その日は娘を女王のように扱い、連れ合いと「どんなワガママを言っても今日は聞いてあげよう」と約束していたが、そうしたらイライラしたりすることもなかった。

 マイメロの人形劇があったので観ていこうとしたら、ポスターの下に「小学生以上対象」と書かれていた。
 僕:「あ、ここ。小学生未満の方には厳しい内容となっております、って書いてあるよ」
 連れ合い:「いや、『厳しい内容』じゃなくて『難しい内容』でしょ」
 単に僕が見間違えただけなのだが、もし「小学生未満には厳しい内容」の人形劇だったら面白いなと思ってしまった。
 うわー、マイメロちゃんの耳がもげたー。そこからおびただしい量の綿が…
 とか、そういう内容だろうか。

 連れ合いが娘をトイレに連れて行った時、一緒に来た次女を僕がその間だけ預かった。うちでは長女の世話は僕、次女(0歳7ヶ月)の世話は連れ合いと決まっている。次女は僕が抱くと大声で泣き出すのだ。赤ちゃんというのは父親に対して人見知りする期間が必ずあり、長女もそういう時期があったのだが、それが次女はすごく長い。僕も嫌がられてもなんだし、長女も僕が次女を構うと怒るしで、かなり次女とは遠ざけられている。
 それが、なぜか少し機嫌が良くて、その時は僕が次女を抱いても泣かなかった。ああ、メルヘンの国にニコニコした赤子を抱いて立っている、この幸せは何に例えればいいだろう。
 近くに「サンリオピューロランド限定」と書かれたプリクラの機械があった。次女が笑っているうちに二人でプリクラを撮ったらどうだろうか。長女は絶対怒るから隠しておくのだ。仕事で使うノートとかにプリクラを貼ろう。ああ、それでも家で仕事をする時に長女にバレたら大変だ…とか思っていたら、がぜんプリクラを撮りたくなってきた。
 しかし、僕はプリクラを撮った経験がほとんどない。人に連れられて撮ったことならあるが、自分でお金をいれて撮ったことは一度もない。写真を撮った後に何か文字を入れたり、ラクガキをしたりするんだよな、と思ったら急にハードルが高く感じられてきた。撮りたい…が、このプリクラの前に付いた「すだれ」が僕には重い!
 そうして機械の前をウロウロしていると、店員さんが寄ってきた。「かわいいねー」などと言って次女のほっぺを触り始めた。女の人にはあまり人見知りしないので、やはりニコニコしている次女。
 なんだよ…俺はこの子とプリクラ撮りたいんだよ。あっち行けよ「女子」!とか思って、もちろんそんなことも言えずグズグズしていたら娘と連れ合いが帰ってきてしまった。やはりプリクラを撮るには女子力が足りなかったようだ。
 

 その日のハイライトは、やはりパレードだった。
 始まる小一時間前から席取りをしている人も多く、まともな席で観られないかと思ってグルグル回っていたら、けっこう良い場所があったのでそこに娘と座った。
 キャラクターが登場する前からパレードは大盛り上がり。それはダンスがすごいから。アクロバットをの人も体操をやっていた人のような体型で、次々に身軽な技を決めている。基本的に女の子が憧れるような、かわいい振り付けのダンス(振り付けは、振付稼業air:manがやっているらしい)なんだけど、そこに曲芸が入ってサーカスのような趣になっている。もっとサンリオのキャラクターに見合うゆったりした感じなのかと思ったら、パレードは一気にテンションが上がる感じだった。前に東京ディズニーランドのパレードも観たけれど、全体にみなぎる気合いの入れようとプロの魂は断然こっちの方が上だなあと思った。(ディズニーランドのが気合いの入っていない回とか場所だったのかもしれないけど)
 やはり人前に出て芸をするというのは、これくらい真剣に自分の技術を高めて、自分と向き合って堂々とやるべきことなんだと思う。
 
 さて、このような雰囲気に弱いのがうちの娘である。わー!と盛り上がる前に、引いてしまうことがあるのだ。辺りが暗くなったときに、横にいた娘は僕の膝に座り替えていた。僕自身はこんな素晴らしいショーを娘と観られて、それだけで気持ちが盛り上がっているんだけど、娘の方はもしかしたらトイレに行くと言ったり、帰ると言いだすかもしれないなと思っていた。
 それが、キャラクターが出た時には「キティちゃんだ!」「おとうしゃん、マイメロちゃんいるよ!」などと盛り上がり始めた。
 ショーのMCのお姉さんが、「今日は特別な人をお迎えします!」と言った。それでキラキラの馬車に乗って登場したのが「キティちゃんのお父さんと、お母さんです!」とか言われた時には、なんじゃそりゃーとずっこけたが、やはり娘は喜んでいた。
 
 そしてパレードの最後、お姉さんが「みんな、一緒に踊りましょう!」と声をかけると、周りの子どもたちがわらわらと集まってロープを越え、ステージに歩み寄っていった。こういう展開がうちの娘は最も苦手なのだ。
 そういえば僕も子どもの頃、ヒーローショーとかで敵の戦闘員が「子どもをさらってこい!」「イー!」とか言って客席に降りてきたとき、どうか自分の方には来ないでくれと必死に念じていたものだったなあと思う。
 しかし、娘は自分から「行く」と言いだした。これには僕の方が狼狽してしまって、「え!?行くの?お父さん一緒に行けないよ?」などと言ってしまった。しかし、娘は前に座っている人をぐんぐん通り越して、ロープも越えてお姉さんのところにたどりつき、可愛いポーズを控えめにとっていた。それを見て連れ合いは感涙…。父はプリクラのすだれさえ越えられないのに…

 メルヘンのパワーはすごい。娘の内弁慶な性質くらいは吹っ飛ばしてくれる雰囲気と勢いがある。
 満足げに帰ってきた娘。いつも家にいる時くらい自己中では困るけれど、いざという時には物怖じしない子になってほしいので、本当に連れてきて良かった。
 

 男親でも、できる限りは子どもと同じものを見て楽しめたらいいと思っている。
 たとえば僕の中学生のころには「セーラームーン」が爆発的に流行ったけれど、観る気がしなかった。さかのぼって小学館の雑誌『小学〜年生』を読んでいた時も、本誌には「はーいまりちゃん」や「スイートらぶらぶ」などの少女漫画が載っていたけれど、飛ばしていた。そういうのを読むことが恥ずかしいとかカッコ悪いと思っていたのではなく、単純に興味がなかったのである。
 けれど、女子の世界はすごいなと、いまこの年になって思っている。
 本来、僕自身はマイメロに別に興味はなく、最初見たときは「なんだこのブルーナのうさぎのニセモノみたいなのは。ミッフィーにほっかむりをかぶせて、なにがマイメロディちゃんだ!」と思っていた。しかし、娘が「かわいいー!」と言って騒いでいるのを見ていたら、良いもののような気がしてきて、しまいには僕もtwitterでマイメロをフォローしたり、サンリオ総選挙で「やばい、シナモンに負ける!」とか言って毎日投票したりという体たらくである。
 また、同じく女子の世界であるプリキュアも、毎週一緒に楽しんで観ているうちに話が楽しみになり、娘は気乗りがしなくてその日の放送を観ようとしなくても、録画を「早く観ようよ!」と言ったりするくらいである。
 
 うーむ、まずい。今まで全く自分の中に無かったものに目覚めるのは怖いような…。
 しかし、今やっているプリキュアなどは悪の手下になった幼馴染を元に戻すために、赤い鏡の中から出てきたラスボスのところに攻め込んでいくという展開になっており、なんか娘がいなくてもこれだったら来週が楽しみのような……まずい。
 よし、こういう時は自分の中の男らしい気持ちを思い出すためにも、メタルだー。amazonでメタルのCDでも買うか!

 あ、Blind Guardianが新譜を出すの?買わないと!ハンズィ・キアシュ(ドイツ人)の野太い声は女子と正反対にあるものだし。
 ……って、
 

 おい、ハンズィ!お前ぜったいプリキュアにハマってるだろ!

2015年1月1日木曜日

コミックマーケット87への参加で考えたこと  

 もう日付が変わって新しい年になってしまいましたが、寒い中コミックマーケットに来てくださった方には本当にありがとうございました。また当日お会いできなくても、CDの発表前、僕があまりにネガティブなので心配してくださっていた方もありがとうございました。

 きっと当日にはさすがに覚悟が決まるものかといえばそんなことなかった。前日に搬入を済ませてあとは行くだけになっていたのに全く寝られず、20分くらい寝たのか寝てないのか分からないまま家を出た。
 前日、連れ合いにこぼした我ながら一番ヒドイ言葉は「もうCD2枚しか売れてなくていいから明日の夕方にワープしてほしい…」であった。

 電車に乗ったものの、満員電車の中で明らかにコミケ客の大学生がデカイ声で話しており、「萌え豚のやつらがどうのこうの」とか悪口を言っているのを聞いていたら嫌になってきた。話の内容からするとどうも、カワイイ女の子キャラクターが出てくる場面だけを好むようなアニメ・ゲームファンの蔑称のようだ。
 それは「三つ目がとおる」で言ったら、写楽くんや謎解きはどうでもよくて、和登さんの服がびりびり破けるところだけを目当てにしているファンのことだろうか。…などと考えていたらどうでもよくなってきた。

 そういえばマノウォーは「これはメタルじゃねえだろ」という音楽に対してフォールス・メタルという概念を作っていたし、LAメタルの華やかなメンバーは「ポーザー」(格好だけ)とも呼ばれていたっけ。精神性のない音だけのパンクについて「ファッションパンク」とかね。そういうものかね。今のご時世に「あいつはポーザーだ」とか言ってたらバカみたいだよね。今度から、「どうも、フォールス・メタルのパラメキア帝国です」って挨拶しようかな。言ったら吹きそうになるけど。
 
 まあ、そんな風に考えていたらすぐ会場に着いた。8時に着いてサークル入場口から入り、すぐ出展の準備に入った。長机の半分のスペースを使って売り場にして良いことになっている。
 今回は本当に新人バンドが体当たりするつもりで、初心に帰ってお客さんを増やせるよう頑張ろうと思っていた。だからポスターを含めたスペースのレイアウトは全部事前に決め、売り子をする僕とボブも名札を作って、一緒に閉会の4時まで声を出して頑張ろうと話した。
 これが当日のスペースの様子。手前のipadからは格ゲーメドレーのPVがループ再生されるようにした。
 



 さあ開場というときに、目の前の艦これ吹奏楽サークルにすごく肌を露出したコスプレをしたお姉さんが売り子として来ていた。……もうダメだ。
 「艦これ・吹奏楽・お姉さん」それの向かい側に、「ファミコン・メタル・猫背」だよ。もうCDをダンボールに戻して、ゆうパックで自宅に戻す準備をした方がいいんじゃないのか。

 しかし、開場してお客が来たらそのお姉さんは大きな声で宣伝をして頑張っていた。
 そうだ、僕らは聴いてくれる人を増やしにココに来たのだ。ここで声も出さずに突っ立っていたら音楽以前に、全ての面で僕らダメになるぞと思った。

「ゲーム音楽バンドですー。ファミコンとかスーファミやってます。聴いてってください!」と、開場の10時から16時まで通る人に呼びかけ続けた。
 通りがかる人の顔を見て今自分が声を出しているというのは、バンドの音楽を聴いてもらうために精一杯の努力をするという点で、せっせとウェブ上で宣伝ページを作ったり、どうしたらいいのか考えたりするよりも何倍も清々しい行動だった。楽器の練習とは別の意味で、自分の中身が清められていくような思いだった。僕はおにぎり2つを食べて、ボブはカロリーメイトを食べて、その間以外は8時間呼びかけをし続けて、僕らのバンドはたぶん一段階レベルが上がったんじゃないかとさえ思える。
 
 視聴をして「おおおー!いいね!」と言ってくれる人。
 PVに目を止めて、面白いことやってますねDVDは無いの?と言う人。
 CDを手に取ってくれて、「既刊はないの?」という人。
 視聴する前にもう買ってくれて、家での楽しみが無くなるからねーという人。
 一曲目のすごく静かな曲を聴いて「いいね」と言って買ってくれて、僕が心配になって「あの、他の曲はすごくうるさいんですけど大丈夫ですか」と聞くと、「そうなの?全然。そういうの好きだからOK」という人。
 そして、明らかに子どもだろうというお客が三人「マッピーは入ってますか」と聞いてきたのは驚いた。300円かー、どうしようかなー、よし、買っていこう、ください!と言われた。年を聞いたら13歳だって…。お父さんに渡してあげたら喜ぶかも。試聴をして気に入ってくれたのかもしれないけど、明らかに子ども用みたいな小さな財布から300円が出てきた光景は目に焼き付いている。
  
 バンドを再始動する際には、以前CDを聴いてくれていた人やライブに来てくれていた人にはほとんど挨拶をせず、というか「またやりますから応援してね」というのがどうもエラソーでできなかった。余計なお世話というのもあるし、勝手にバンドを中断しておいて何だよというのもある。
 しかし、当日の会場には僕らのスペース前を偶然通りかかって、「復活してたのー!?」と驚いてくれた人が何人もいた。カタログで目にしたわけでも、twitterやホームページで見たわけでもなく、その日に知ったのだという。中にはパラメキア帝国を観に来て、自分もバンドを始めた!と言ってくれる方も。(こんなフォールス・メタルバンドを…。)
 そして、すごく応援してくれていた人に10年ぶりに再開して、本当に喜んでくれて、握手をしたらなんか目がウルウルしてしまった…。
 10年休んだ分、それを取り返せるくらい頑張っていこうと思った。というか、早く帰って練習したくなった。
 
 その日は結局、僕らの1枚目のアルバムと2枚目のアルバムの間くらいの枚数のCDを手に取ってもらうことができた。
 年の瀬で、僕らのような年代は参加しづらくなっている日程、しかも以前のようにFFやFalcomのアレンジやメタルアレンジが流行っているわけでもなく…という状況でそれだけの数の人に聴いてもらえるというのはとても嬉しいし、驚きでもあった。

 こういう活動はやはり続けていかないと意味がないし、今回無理をしてCDを出せました…というのではダメで、また出せる体制を整備しなければならないと思う。今回のCD制作についての反省も忘れずにしないと。
 
 というわけで、CDを聴いてくださった方でお時間の許す方はぜひアンケートにご協力ください。項目の全てに答えなくても、答えやすい項目だけでも大丈夫なようにしてありますので。悪い点は超真剣に受け止めて次に生かし、良い点を書いてもらったら、側で見ていたら気味悪がられるくらい喜びます。よろしくお願いします。

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 コミケ会場を片付けたらこんな感じ。祭りの後というか…

 だけど、どんなに頑張っても燃え尽き感は味わったことがないので、もう次のアルバムに何を入れようか考えています。というか、3曲決まりました。よし、やるぞ!